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想定5分 BL声劇『バレンタインは生徒会の後で』 作 沖ママ

会長『受け』、風紀委員『攻め』

会長
「さて、今回の生徒会も無事に終わったわけだが、なぜ俺はここに残されているのかな?」

風紀委員
「会長、あなたは本校生徒会会長としての職務を忘れたわけではあるまい。」

会長
「職務は全(まっと)うしていると自負(じふ)していたんだかな。何か落ち度でもあったか?」

風紀委員
「表向き、教員や来客に対する対応については申し分ないかと。」

会長
「では何を忘れているのか、教えてもらえるかな?」

風紀委員
「バレンタイン。忘れてはないだろう?」

会長
「バレンタイン……あぁ、あのチョコレートを送るスペクタクルイベントか!」

風紀委員
「スペクタクルかどうかは知らないが、一大イベントであることには変わりない。このままではバレンタインというイベントによって学校中が甘い匂いに包まれてしまう。そして恋だの愛だのを囁(ささや)きあい、やがては風紀が乱れる!風紀委員として、これは見過ごせない!」

会長
「そーれーで?俺にどーしろと?」

風紀委員
「会長はバレンタインにチョコレートを貰ったことはあるのかな?」

会長
「ある。」

風紀委員
「あるのか!?あぁ、あるのか。それは家族や親族ではなく……。」

会長
「あぁ、割と貰ってる方だと思うぞ。みんなどのくらい貰ってるのかは知らんが、持って帰るのも、その後に食べるのも一大イベントだ。」

風紀委員
「あぁ……なんという事だ。俺の生徒会会長はもう、もう既にバレンタインの魔の手に堕ちているとは!」

会長
「わざわざ生徒会終わって残した理由はそれか?」

風紀委員
「そうだ!と言えばそうなのかも知れん。いや、そうでは無いのかも知れん。」

会長
「なんだよ、どっちなんだ?」

風紀委員
「率直に言おう!」

会長
「宜しく頼む。」

風紀委員
「俺からの会長へ対する愛を形にしてみた。受け取ってはもらえないだろうか?」

会長
「これを?」

風紀委員
「そうだ。」

会長
「俺に?」

風紀委員
「他に誰がいる?」

会長
「あ、ありがとう。」

風紀委員
「よっしゃ!」

会長
「まさかお前からチョコレートもらうなんて思って無かったわ。これ、食っていいのか?」

風紀委員
「無論だ。是非食べてみてくれ。」

会長
「……ん?モグモグ……ひょっとしてだが、これって手作りなのか?」

風紀委員
「丹精(たんせい)と愛とちょっとアレをたっぷり込めた特注品だ。」

会長
「わざわざありがとな。」

風紀委員
「ふっ、礼には及ばないさ。」

会長
「……ん?ちょっと待て。」

風紀委員
「どうした?」

会長
「お前さっき、俺の生徒会会長はもう……とか言ってなかったか?」

風紀委員
「あぁ、言ったな。それが何か?」

会長
「それってどういう事だ?」

風紀委員
「会長……まさか、分かってないのか?」

会長
「ん?今更だけど、このチョコレートってそういう……?」

風紀委員
「え?それ以外に何がある?」

会長
「お、おう……。まぁ、そうだな……。」

風紀委員
「だろ?」

会長
「もうひとつ、聞いておきたい事がある。」

風紀委員
「なんだ?」

会長
「……お前まさか……盛った?」

風紀委員
「な、何故そう思うのかな?」

会長
「チョコレート食ってからおかしいんだよ。お前を、愛おしくて見てらんない。なんだこれは……。」

風紀委員
「やっと効いてきたか。」

会長
「何をした?」

風紀委員
「惚れ薬を仕込んでおいたのさ。ネットで買った19800円!これほどまでに効果があるとは……。」

会長
「……ほ、惚れ薬……だと!?それで……お前を見てらんないのか……。見ているだけで、こうして話しているだけで……胸が苦しくなってくる。」

風紀委員
「ふふふ……あははははは!やっと、やっとだ!やっと会長を我がものに……。」

会長
「……いつからだ?」

風紀委員
「いつから?」

会長
「いつから、そういう目で見ていた?」

風紀委員
「生徒会に入って、風紀委員をやって会長を間近に見ていた。生徒の為に、学校の為にと奔走(ほんそう)する姿は眩(まぶ)しかった。」

会長
「なるほどな……。」

風紀委員
「会長、今どんな気分だ?俺がこうして会長の手を取ったら、触れたらどんな気分になる?」

会長
「や、やめてくれ……。体が……熱い……。恥ずかしい。でも……嬉しい。」

風紀委員
「逃げ出したって、いいんだぞ?」

会長
「嫌だ!もっと触れて欲しい。もっと触れられたい。もっと……。」

風紀委員
「会長……。抱きしてめも……いいかい?」

会長
「んん!?そ、そんな。抱きしめられたら、俺!」

風紀委員
「どんどん会長が壊れて行くの……楽しいなぁ。ねぇ、会長?俺だけのものに、なってよ。」

会長
「な、なる……。なぁ、すげぇドキドキしてる……。聞こえるか?」

風紀委員
「ふふふ……可愛いなぁ。」

会長
「あ、抱きしめ……られてる……。」

風紀委員
「俺に全て委(ゆだ)ねろ。」

会長
「お、俺……こういうの……恋愛とか、初めてだから……。」

風紀委員
「だから、俺に任せろって。な?」

会長
「あぁ。任せるよ。」

終わり

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