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想定5分 BL声劇『バレンタインの奇跡』 作 沖ママ

男A『受け』、男B『攻め』

男A
「なぁ、おぃ!聞いたか!?」

男B
「なんだよいきなり。」

男A
「昨日の特番!見た?」

男B
「あ~、あれか?バレンタインの日の夜、奇跡が起きるってやつ。」

男A
「それだよそれ!気になるよなぁ。」

男B
「緊急特番!ってあったからつい見ちゃったわ。」

男A
「何か起こると思うとドキドキするよな。」

男B
「お前さぁ~、そこはワクワクするよな。の間違いじゃねぇの?」

男A
「奇跡ってなんだろうなぁ~。」

男B
「さぁな。でも、バレンタイン前日に緊急特番やるなんて珍しいよな。」

男A
「世界は全てチョコになる!とか?」

男B
「それは無い。断言する。それはあり得なさすぎる。」

男A
「何かさ、めっちゃ専門的な人とかも出てたじゃん?」

男B
「出てた出てた。胡散臭い学者みたいなのとか、聞いたことない研究所の所長とかな。」

男A
「そうそう、染色体とか言われてもわかんねぇっての。」

男B
「お前はさ、信じるのか?」

男A
「信じるって、あれか?アルファとかベータとか……あとなんだっけ?」

男B
「オメガ、だな。」

男A
「そうそれ!アルファ染色体とベータ染色体は惹(ひ)かれあって、オメガが……。」

男B
「発情期を迎えるってさ。」

男A
「そもそも発情期なんてねぇだろ!って話しだよなぁ。」

男B
「自分がもし、オメガだったらどうなるんだろうな。」

男A
「さすがに……ヤバいんじゃね?」

男B
「だよなぁ。見ててオメガは嫌だなって思ったわ。」

男A
「それは俺も思った。絶対やべぇって。」

男B
「さてと、そろそろ行かないとな。」

男A
「あぁ、もうそんな時間かよ!なぁ、今夜。検証しないか?」

男B
「奇跡とは何か。何が起こるのか?」

男A
「そうそう。動画撮ってさ。」

男B
「なんなら、ライブ配信でもいいんじゃないか?」

男A
「それ面白いね!じゃあ、また夜に!連絡するわ!」

《間を開ける》

男B
「お待たせ~。準備、出来てるか?」

男A
「布団は敷いてあるし、お風呂も入ったから準備万端だよ!」

男B
「そーゆーのは聞いてねぇって。……うわ、マジで布団敷いてあんじゃん。」

男A
「偉いでしょ?」

男B
「お前はどうなって欲しいんだよ。これから、ライブ配信すんだろ?」

男A
「そうそう。何が起こるんだろうねぇ。楽しみだなぁ。よ~し、それじゃあ始めるよ~。」

男B
「おっけー。」

男A
「こんばんは~。オンラインサロンへようこそ。今日は、ファンサバの限定公開だよ~。みんな昨日、見た?バレンタインの日の夜に奇跡が起こるってやつ。そこで、何が起こるのかを検証するために、親友に来てもらいました~!」

男B
「ども~。こんばんは。宜しくお願いします。」

男A
「さてさて、時間も遅くなってきたけどなかなか何も起こらないね?」

男B
「このまま何も起こらなかったりしてな。」

男A
「どうだろうねぇ~。」

男B
「そういえばさ、お前飲むペース早くないか?」

男A
「何だろ?今日は何かすっごい喉(のど)が渇(かわ)くんだよね。」

男B
「大丈夫かよ?」

男A
「大丈夫大丈夫。奇跡の夜にブーストかけてくよー!」

男B
「お、おぃ。お前やっぱり何かおかしいって。水、取ってくるわ。」

男A
「ダメ!離れないで!そばにいて!」

男B
「わ、分かったよ。でも、無理はするな。いいか?ヤバいと思ったら配信切るからな。」

男A
「分かった。我慢する。」

男B
「我慢すんなっての。配信を見てくれてる人達には何も起こってないみたいだな。」

男A
「そうだね。今の所何も起きてないかな。ん?でも……男の子が……いないね?」

男B
「え?コレ見てんの、みんな女の子!?」

男A
「そう……だね。最初は男の子もいたんだけど……。今はいないな。」

男B
「それって何か!?バレンタインの奇跡なのかよ!?」

男A
「わ、分かんない……けどさ……もう俺……限界……かも」

男B
「限界!?何が!?おぃ!どうした!?」

男A
「今日までさ、思ってた事があるんだ。」

男B
「なんだよ、言ってみろ。」

男A
「俺、お前が好きだ。」

男B
「は?」

男A
「好きなんだよ!気のせいかなって思ってた。でも違う。俺はお前が好き。」

男B
「何言ってんだよ!?俺、帰るわ!」

男A
「どこに行くの?逃げようとしたって無駄だよ。外を見てみなよ。」

男B
「な、なんだよこれ……。何か周り囲まれてんじゃん!?しかも……男ばっかり!?」

男A
「俺はさ、今夜起こる奇跡。それは、全ての覚醒だと思ってる。」

男B
「覚醒……?」

男A
「アルファ染色体、ベータ染色体、オメガ染色体。そして、その全てに狙われる特殊体質。それがエックス染色体。」

男B
「お前……何を……。」

男A
「ずっと不思議だったんだ。オメガではない俺が、どうして好きになってしまうのか。」

男B
「どういう事だ!?」

男A
「エックス染色体は発情しない。オメガ染色体保有者であれば、必ずどこかで覚醒し、発情する。」

男B
「俺がアルファやベータだって可能性もあるだろ!?」

男A
「無いね。何故なら発情期のオメガ染色体保有者を近付けても何も反応を示さなかった。俺さ、めちゃくちゃ我慢してたんだよ。なんなら抑制剤まで飲んでさ。」

男B
「お前……何を言ってるのか分かってるのか……?」

男A
「分かってる。そして今、確信した。世の中の男どもが覚醒している今、普通にしていられるエックス染色体の持ち主。今夜、ここに閉じ込めておいて正解だったよ。言ったろ?布団も敷いてあるって。」

男B
「ま、まさか!?」

男A
「でもね、安心して。お前は俺だけが愛せる崇高(すうこう)な存在なんだ。」

男B
「あ、そうだ!こ、これ!配信されてんだろ!?ヤバいって!」

男A
「何を言ってるの?みんなこれからの行為に期待してるんだよ? さぁ、行こう。」

男B
「ダメだって!お、お前何だよ!?力、すげぇ……。クソッ!」

男A
「あはは、覚醒している人は通常の5倍の力も大きさもあるから。ね?大丈夫。安心して。もう逃げられないよ。」

男B
「嘘だろ!?こんなのアリかよ!?」

男A
「朝まで時間はある。それまでお前の体と心が持つかどうかは保証出来ないけど、ね。」

終わり

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