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ゾウの採食時間延長に向けて

皆さんこんにちは、飼育員歴1年目のアラカキと申します。今回はゾウの採食時間延長に向けての取り組みについて紹介します。

さて、突然ですがクイズです!
Q野生のアジアゾウの採食時間はどのくらいでしょうか?

…正解は約18時間半と1日の3/4を採食に充てています。
しかし動物園だとどうでしょうか?
野生とは違って飼育員がエサを準備するため餌を探す時間がいらなくなります。
当園の琉人と琉花は採食時間が約6~8時間と野生のゾウと比べるととても短いです。
採食時間が短い=暇な時間が増えやることがない。と暇な時間が常同行動へと繋がります。
中でもオスの琉人は1日の大半の時間をこの常同行動に充てています。
琉人は左右に揺れるという飼育下ゾウに多い常同行動をしています。
なぜ常同行動が良くないの?と思われる方がいるかと思いますが、左右に揺れる常同行動では肢への負担や運動不足へ繋がります。
ゾウにとって肢は心臓と同じくらい大切な役割をしています。
大きな体を支える肢(蹄やパット)のケアは毎日行いますが、固いコンクリートの上で常同行動を続けると蹄が割れそこから菌が入ることがあります。
もし菌が入ると命取りになります。
足を悪くし立てなくなり寝たきりになると自分の重みで内臓を悪くし死へと繋がります。
その為常同行動を減少させるためには採食時間の延長がカギとなります。
採食時間を延長させる為に以下の5つを琉人と琉花へ実施しています。

  1. 採食時間。探索行動延長の為にニンジンやイモなどの野菜やヘイキューブ、枝葉や青草などを隠したり、撒き餌さを行う。(餌は毎日違う場所に隠すことで放飼場全体に餌が隠されてないか探すようになり探索時間が増えます。)

石垣の隙間やガジュルの根っこ、土管など放飼場全体に隠します。
最近では砂の中に埋め牙や前肢を使って掘ってもらえるような行動を引き出せるように模索中。

2.     バナナの茎を一枚ずつはがし1回に食べる回数を増やします。

右と左のバナナは同じバナナを使っています。
同じバナナでも1枚ずつ皮を剥がすとこのように数が増えます(マジック笑)

3.     枝葉を与えるときは簡単に取り出せないようにする。

建物自体をフィーダーにしました笑

野生では木を折って食べるという行動を動物園でも再現できるように高い所に木を掛け実際にゾウが折って食べる行動を引き出せるようにしています。

4.     給餌する場所をなるべく固定しないようにする。(ここで待っていると餌がもらえると思わせないようにする。)

5.    フィーダーを使う。

上から順にブイフィーダー、鉄の筒フィーダー、竹フィーダー(振ってほしいなーと思っていたが足で踏んで割って食べていました。思い通りにいかないこともたくさんありますがその中から新たな発見が生まれることもあります。)です。

この5つの方法で給餌することによって採食時間の延長に繋げています。
一年前と比べるメスの琉花ではほとんど見られなかった探索行動が少しずつですが増加し始めました。
オスの琉人では1日に何回も撒き餌など行い、まだまだ短時間ですが撒き餌さをしていない時でも放飼場を動きまわるようになってきました。
今後は、新しいフィーダー作成や採食時間延長を目指します。
まだまだ野生のゾウの採食時間には及ばないですがこれからも琉人と琉花が幸せに生活できるように日々試行錯誤し動物福祉向上を目指します。
応援よろしくお願いします!

※このブログは、2021年12月に沖縄こどもの国ゆんたくコミュニティにて掲載されたものを再掲しています。

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