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古の森に思いをはせてみる

ゆんたくコミュニティのみなさま、こんにちは!
サルなどなどを担当しております中村です。
今回は徒然なるままにカメのお話をしたためてみたいと思いますのでしばしお付き合い下さいませ。

皆さんはムツアシガメというカメをご存知でしょうか?

そう、誰しもがご存じの「アジアの黒いケヅメリクガメ」ことムツアシガメです。
え?聞いたことも見たこともない?
こちらがそのムツアシガメManouria emys です。

東南アジアの森に生息しているリクガメの仲間で、スマトラムツアシガメ(以下スマトラ)Manouria emys emysとビルマムツアシガメ(以下ビルマ)Manouria emys phayreiの2亜種に分けられています。
写真の手前がスマトラ、奥がビルマです。
詳しい話は長くなるので簡単な見分け方は黒くてデカいほうがビルマだと思って頂ければと思います。
2022年2月現在、沖縄こどもの国のアークおきまるにて飼育展示中です。
ちなみに同じManouria属にインプレッサムツアシガメという悪路でも速そうな名前のムツアシガメもいるのですが日本ではそうそうお目にかかれないので憧れのリクガメです。

ムツアシは漢字で書くと六つ足なのですが、実はこのカメには足が6本・・・・あるわけはないですね(笑)
後ろ足の太腿の裏側に蹴爪状の鱗があってそれが足のように見えるのでこの名前が付けられたようです。

写真2
写真3


写真2がスマトラの蹴爪状の鱗、写真3がビルマのものです。
スマトラは確かに足っぽく見えますがビルマのは…どちらかというと尻尾のようにも見えますね。

リクガメのお食事シーンを思い浮かべてみてください。
モヤモヤモヤーンと頭に浮かんだのは葉っぱ、サボテン、果物をおいしそうにモリモリ食べる姿ではないでしょうか。
多数のリクガメは草食性なのでそのイメージ通りなのですが、このムツアシガメのように森で暮らしているリクガメの仲間は肉も食べる雑食性なのです。
最近アルダブラゾウガメが鳥を襲って食べるのが確認されたニュースが一部で話題になりましたね。
雑食性のリクガメは時には弱ったリクガメを襲って食べてしまうこともあるようです。
また、動物質の物も食べさせた方が繁殖も上手く行くようなので、沖縄こどもの国でも暖かい時期は時々鶏肉を与えています。

さてさて前置き?が長くなってしまいましたがここからが本題です。

またまた皆さんに質問です。
オオヤマリクガメというカメをご存じでしょうか?

どこかの動物園水族館で見たことがある…もしくは沖縄こどもの国でムツアシガメと一緒にそんな名前のカメが飼育されていたような…。
残念ながら違います!
どこかで見たそんな名前のカメがコチラ!。

そのカメの名はオオヤマガメ、名前は似ていて惜しいですが全く別のカメです。

オオヤマリクガメは化石を元に名前が付けられた絶滅してしまっているリクガメの仲間なのです。
今から約1万8000年前に沖縄に生息していたリクガメの仲間で、1970年に知念村(現 南城市)にある石灰岩の崖のフィッシャー(堆積物の詰まった岩の割れ目)で大山盛保さんによって発見されました。
それから研究が進められ約30年後の2003年に、発見者である大山盛保さんを記念してオオヤマリクガメManouria oyamai と命名されました。

おや?Manouriaどこかで見たような…そうです、オオヤマリクガメはムツアシガメの近縁種なのです。

縁があって特別に撮影させてもらった鹿児島大学所蔵のオオヤマリクガメの化石の写真がこちらです。

オオヤマリクガメの他にもリュウキュウジカやリュウキュウムカシキョンという絶滅してしまったシカ類の化石、現在でも生息しているイノシシやヤンバルクイナ、ケナガネズミの化石も見つかっています。
1万8000年前の沖縄の森では、オオヤマリクガメが闊歩し、時には息絶えたリュウキュウジカやヤンバルクイナの亡骸を貪ることもあったのだろうなぁ…僕の手を食べようと口を開けているムツアシガメを眺めながら1万8000年前の森に思いをはせているのでした。
 
おまけ。
港川人の発見者としても有名な故・大山盛保さんの誕生地である北中城村には記念碑が建てられています。

また、港川人が発見された旧具志頭村・港川フィッシャー遺跡は公園になっています。(現在は整備中で入ることはできませんが…)

県外の方は沖縄に来られた際、県内の方は中南部をぶらぶらする際に訪れてみてはいかがでしょうか。

※このブログは、2022年2月に沖縄こどもの国ゆんたくコミュニティにて掲載されたものを再掲しています。