文旦

 母からひ孫が文旦の果皮で作った帽子を被り、嬉しそうに笑っている写真がラインに送信されてきた。写真をみて、微笑ましく思った。
 台湾で中秋節が近づくと、文旦が市場に出回る。お月様へ供える果物として欠かせないからである。文旦はザボン類に属し、洋梨のような形をして、甘酸多汁の漿果である。果皮が厚いため、子どもたちは剥いた果皮を兜のようにして、被って遊ぶ。台南麻豆(まとう)産が一番美味しいと有名だ。戦前、優良とされた文旦は日本の皇室に献納された。
 中秋節に欠かせない文旦には「一家団らん・円満に過ごす」という願いが込められている。家族や親族だけでなくお世話になった方への感謝の気持ちとして、日本のお中元のように贈答品としても扱われている。
 母に「文旦が食べたい」と返事した。2023年9月30日付の琉球新報紙面で、ついに台湾文旦が沖縄に上陸したとの記事があった。

(辺野喜 陳宝来)

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