パイワン族の遺骨4柱を返還

 2023年11月初旬、台湾の屏東県牡丹郷役場の関係者から、牡丹社事件で犠牲になった原住民・パイワン族の遺骨4柱が、英エディンバラ大学から台湾に返還された、とのニュースリリースが届いた。
 遺骨は4日にロンドンを出発し、5日に台湾に到着。先住民族行政担当の中央省庁である原住民族委員会は「大きな歴史的意義を持ち、原住民族の移行期正義にとっても重要なマイルストーンとなった」と評価した。
 牡丹社事件は、1871年に台湾南東部の八瑶(はちよう)湾に漂着した、宮古島からの乗組員54人が、現地の原住民・パイワン族に殺害された「琉球船台湾遭難事件」が発端となり、74年5月に明治政府が台湾に出兵した事件をいう。この時「石門の戦い」で、日本軍はパイワン族12人の頭蓋骨を戦利品として、持ち去った。そのうち4柱がスコットランドに流れ着き、1907年よりエディンバラ大で保管されてきたという。同大での遺骨返還儀式は、パイワン族の集落に伝わる伝統儀式にのっとって行われ、参列者らは台湾との国を超えた協力の頂点だったという。
 台湾の原住民族社会が、海外の機構に遺骨返還を求めて実現した初の事例で、来年の牡丹社事件150周年までに、4柱の遺骨がスムーズに返還されたことは、牡丹社の伝統と希望を尊重した、大きな突破である、とパイワン族の関係者らは語る。

(辺野喜 陳 宝来)


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