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シヌグだョ!全員集合

去年の8月のこと。突然子供会のグループラインにこんなメッセージが届きました。

ー今週末はウンナージャーレーを行う予定です。小学校の男子は上のみ体育着に着替えて8時に公民館集合お願いします!


待て待て。
ある日突然ウンナージャーレーします!と言われましても。

何かを教わるにしても「はい!まずはやってみなさい!」と言い出す沖縄のおばーのごとく前情報無しで始まり、説明を求めると聞いていないことまで返ってくる。それが沖縄のおばー…違った。沖縄行事です。

どうやらウンナジャーレーというのは旧暦の7月18日の「シヌグ」という行事の中で行う儀式のことらしい。シヌグ・ウンナジャーレーとは一体何なのか調べてみることにしました。

酒・米・線香・フルーツがあれば大体の供物は間違いない

シヌグとは

シヌグは沖縄本島北部とその周辺離島に残る祈願行事の一種。一種というのも、祈願ごとが「ほんとかよ」って言いたくなるぐらい多い。

まず「ウマチー」という豊作の祈願だけで年4回あります。そもそも農家が少なくなってきて、会社員&共働きしている世帯には必要な行事なのだろうか?という疑問はさておき、ほかにも海の神や火の神関係の祈願など、年がら年中祈願関係でスケジュールが埋まっている状態。
もちろんどれも大切な行事ですが、その中でもシヌグは特徴的な日。

シヌグは、方言のシヌジュン(凌ぐ)が語源と言われていて「厄災を凌ぐ」という意味があるそうです。祈願行事の中でも豊作関係が約半分を占める中、唯一「厄除け」を祈願する日。地域によっては悪魔祓いをすると言われていたり、とにかく厄を払う大切な儀式のようです。

近年ではそれに便乗して豊作祈願やネズミ避け祈願の意味も含むそうです。(豊作祈願4回あるのに)シヌグは起源も不明で、長い年月を経て地域で変化した部分もいろいろとある様子。

↓行事みっちり具合は博物館の記事からどうぞ

ちなみにシヌグとして有名なのは国頭村の安田(あだ)地区にある「安田のシヌグ」。こちらは国の重要無形民俗文化財に指定されています。シヌグは歴史的にも評価が高い行事だそう。

シヌグの男の子はハード

伊是名島のシヌグは部落別で行われます。この日は仲田部落のシヌグの様子を見学しました。

基本的に小学生の男の子は(ほぼ強制)参加。はじめに伊是名城跡の山に登り、そこで輪になって唄をうたいます。すると神様が降臨して、男の子は神の代わりとなるそう。

そうして神様役として家々へお祓いに行く、という流れ。山登りの儀式のあと「おれは神様だー!」と叫びだす。男子ってこうよね〜。

まず山に登って神を降臨させるところから
朝から山登りキッツぅ
出発かと思いきや、次は近くにある別の拝所へ行き手を合わせる。
そのあと周りを3週まわる。何故かダッシュでないといけないらしい。

このあと全員で3グループくらいに分かれて、部落の全家庭を1件ずつ回っていきます。このときにようやくウナザーレー開始。

内容としては神の使いの男の子たちが長めの棒を持ち土足で家に上がり、祝詞のようなものを唱えながら、床にトントンと棒を当てて歩き回ります。ウナザーレー中、家の人は全員外に出ないといけないので、あらかじめ家の外で待ってる家主さんもいらっしゃいました。

ときどき「んもー遅いよ〜待ちくたびれたさ〜」「もっと大きく掛け声!ほら!」といったヤジが飛んできて、どちらかと言うと大人の方が盛り上がっています。

私もお迎えする側として過去に体験済みであり、部屋で座っていると突然「家から出て!今すぐ!」と叫ばれて飛び上がって家を出たことがあります。火事か何かと思ったのでめちゃくちゃビックリしました。そのあと子どもが土足で家に上がり込んで行くわでさらに何事かと思いました。前情報は大事。

この日は雨上がりで地面がぬかるんでいましたが、そんなのおかまいなしで土足。

昔は棒で家の中を破壊

昔は古くなったお茶碗などをわざと家の中に置いて、神の使いになった子どもたちが棒を使ってそれを叩き壊すという行為がありました。そうやって派手な音を出し、厄を落とすという意味があったそう。

そんななか某部落では、過去に障子戸までバッキバキに割る輩が出てきて破壊行為が禁止になり、現在は床をトントンと叩いて音をすのみとなったとか。

これぞ変わらぬ風景なのでは。伝統文化と古民家のコラボがたまりません。


最後はゴール地点となる別の拝所へ行き、おかゆを食べて、海に行って身を清める儀式をして終了だそうです。

シヌグの前にはウンザミもね

シヌグの前日にあたる旧暦の7月17日には「ウンザミ(またはウンジャミ)=海神」という女性(ノロ)が中心になって祈願をするという行事があります。地域によってはシヌグのように女の子が神の代わりとして海神にお祈りするそう。

ウンザミのあとはシヌグと決まっていたり、また別の地域では男女対抗の儀式があったり、男女が対になるような内容が多いのも特徴の一つです。お隣伊平屋島ではまたちょっと違うようで、地域の細かい違いを見てみるのも面白いかも。

シヌグで無病息災

祈願ごとが多い沖縄の行事で、祈るという行為は一方的にお願いをしている気分ですが、来てもらうと確実に「祓ってもらった」感があり、気持ちがとてもすっきりします。

神様役の男の子たちは暑さで終盤ぐったりしていたので、来年からはおやつを準備してあげようと思いました。付き添いの区長さん含め大人の方もおつかれさまでした。

お腹空いたーと言いながらトボトボ歩く男児たち。


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