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かつては那覇市にあった東陽バスの本社

東陽バスの現在の本社は沖縄県南城市にあるが、かつては県都である那覇市内に本社を置いていた。南城市に移転してくるまでに、確認できるだけで3度移転している。
なお、東陽バスは1951年に創業したバス会社であるが、2012年10月に会社分割を実施しており、現在の東陽バスは2代目である。この記事では初代東陽バスも含めた変遷を整理している。


東陽バスの本社の変遷

東陽バスが自社で発行している資料は無いが、「沖縄 交通機関の歩み 戦前・戦後編(1979年7月 大城辰雄 著)」という書籍に、創業からその後の本社の移転に関する記述がある。該当部分を引用する。

昭和25年4月、戦後初の民営バスとして設立された協同バスの与那原出張所(那覇市壺屋)がその前身で昭和26年6月1日より業務を引継ぎ誕生し那覇市壺屋で営業した。後に営業は那覇バスターミナルに移り本社は古波蔵に移転した。更に昭和49年7月27日道路工事による退去のため本社は那覇市壺川に移転した。

沖縄 交通機関の歩み 戦前・戦後編(1979年7月 大城辰雄 著)p.192

これによると、創業の地は「那覇市壺屋」、那覇バスターミナルの開設に伴い「那覇市古波蔵」に移転、1974年7月に道路工事に伴い「那覇市壺川」に移転したことが確認できる。
また2012年10月1日より会社分割により(旧)東陽バスから(新)東陽バスに事業が引き継がれているが、その際に同時に本社も「南城市」に移転している。
地図に落とすと以下の通りである。

東陽バスの本社の変遷
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

初代本社は壺屋のどこ?

冒頭で引用した「沖縄 交通機関の歩み」を再掲する。太字が創業地、すなわち初代本社に関する記述である。

昭和25年4月、戦後初の民営バスとして設立された協同バスの与那原出張所(那覇市壺屋)がその前身で昭和26年6月1日より業務を引継ぎ誕生し那覇市壺屋で営業した。後に営業は那覇バスターミナルに移り本社は古波蔵に移転した。更に昭和49年7月27日道路工事による退去のため本社は那覇市壺川に移転した。

沖縄 交通機関の歩み 戦前・戦後編(1979年7月 大城辰雄 著)p.192
太字は筆者によるもの

那覇市壺屋で与那原出張所というのはよくわからないが、恐らく、与那原町にあった協同バスの与那原出張所を引き継いで、那覇市壺屋に本社を置いたということであろう。
この壺屋の本社であるが、1950年代前半の資料は数が少なく、まだ詳細な住所は見つけきれていない。
ただ「グダグダ(β)」さんのWebサイトに、1952年頃の壺屋周辺の地図があり、これによると、当時の市場通り沿いに東陽バスが立地していたようである。本社とは記述がないが、時期的にはこれが東陽バスの初代本社であろう。

当時の壺屋周辺の地図と立地施設 左図のgの上が東陽バス
(出典)「グダグダ(β) 市場通り(52年)2」を筆者が加工

左図は沖縄主要地主要商工年鑑(1952)の第十七図・十八図から作成、右図はその範囲を示したもので左図とは上下が逆になっています。
(中略)
2も国際通り側から。
まず左側の道奥にピカソ美容室(*1)があります。表通りに戻りカネイチマーケット(角)、楠見薬局、川田厚生堂、文楽堂、国吉商店、荒垣兄弟商会支店(*2)、明○堂、大丸百貨店、旭すし支店。
桜坂に入る道をこえて角にcのアサヒマーケット、続いて永山商店(日用雑貨荒物)、大洋ガラス、、富村商店(食料品雑貨)、大城商店(日用雑貨)、宜保商店(角)。 道をこえて上間時計店、とみや商店(食料品雑貨)、少し離れて小田切商事、前仲商店。 進んでgの三共バスのりば後方の坂道に沖縄陶器、バスのりば隣りが東陽バス
※*1「ピカソ美容室 奥島幸子 東京美容専門学_出身」、*2「化粧品 小間物 雑貨卸売 荒垣兄弟商会支店」

グダグダ(β) 市場通り(52年)2
太字は筆者によるもの

上記より、現在は壷屋パークというコインパーキングがあるところに、東陽バス(の本社)があったようである。地図で示すと以下である。

壺屋に立地していた初代本社は、那覇バスターミナル開設と同時に、古波蔵へ移転したようである。詳細の日時の記述がないが、初代那覇バスターミナルの設置は1954年12月5日$${^1}$$のことであるので、那覇バスターミナルの開設と同時であれば、1954年12月5日に移転である。

昭和25年4月、戦後初の民営バスとして設立された協同バスの与那原出張所(那覇市壺屋)がその前身で昭和26年6月1日より業務を引継ぎ誕生し那覇市壺屋で営業した。後に営業は那覇バスターミナルに移り本社は古波蔵に移転した。更に昭和49年7月27日道路工事による退去のため本社は那覇市壺川に移転した。

沖縄 交通機関の歩み 戦前・戦後編(1979年7月 大城辰雄 著)p.192
太字は筆者によるもの

2代目本社は現在の古波蔵交差点近く

2代目本社の住所は、1972年5月15日時点のバス会社一覧表$${^2}$$によると「那覇市古波蔵263」であるが、これは1983年10月11日の住居表示により現在は「那覇市古波蔵2丁目1番6号$${^3}$$」である。現在の古波蔵交差点の近くであり、地図で示すと以下である。

2代目本社が存在した1970年5月当時の航空写真を以下に示す。

2代目本社 1970/05/12撮影
(国土地理院の空中写真【MOK701-C12-11】を筆者が加工)

この2代目本社は、1974年(昭和49年)7月26日をもって閉鎖されて、那覇市壺川に移転したようである。

昭和25年4月、戦後初の民営バスとして設立された協同バスの与那原出張所(那覇市壺屋)がその前身で昭和26年6月1日より業務を引継ぎ誕生し那覇市壺屋で営業した。後に営業は那覇バスターミナルに移り本社は古波蔵に移転した。更に昭和49年7月27日道路工事による退去のため本社は那覇市壺川に移転した。

沖縄 交通機関の歩み 戦前・戦後編(1979年7月 大城辰雄 著)p.192
太字は筆者によるもの

閉鎖理由は、道路工事とのことであるが、これは2代目本社が移転した後の1977年12月当時の航空写真で確認できる。

2代目本社(廃止後) 1977/12/13撮影
(国土地理院の空中写真【COK771-C59-7】を筆者が加工)

2代目本社の敷地の真ん中を国道330号が通っているが、これが移転理由となった道路工事である。
1970年7月の那覇大橋の開通$${^4}$$に伴い、国道330号と県道221号線が食い違いで国道329号と交差するようになったが、これを1か所の十字路交差点とするために、国道330号がやや南側に移設されることとなり、支障となる2代目本社が移転させられたようである。

3代目本社は約38年間使用

3代目本社の住所は「那覇市壺川34番地$${^5}$$」であるが、これは2002年11月23日の住居表示により現在は「那覇市壺川2丁目3番17号$${^6}$$」である。那覇中央郵便局の隣であり、現在は「ワイズエステムコート壺川駅前」というマンションが建っている。地図で示すと以下である。

3代目本社が存在した1977年12月当時の航空写真を以下に示す。

3代目本社 1977/12/13撮影
(国土地理院の空中写真【COK771-C59-7】を筆者が加工)

会社規模の拡大に伴うわけではないため、敷地面積は2代目本社とあまり変わらず、バス車庫としての機能も引き継いだようである。
なお、少し北側にもバスが停車している敷地があるが、これは1976年11月まで立地していた那覇交通の旧本社敷地であり、この当時は観光部と整備工場が残っていた。那覇交通の本社の変遷については下記の記事でまとめている。

この3代目本社は、会社分割により2012年10月に(新)東陽バスが誕生するまでの約38年間使用された。

4代目となる新生東陽バスの本社

2012年10月1日より(旧)東陽バスから(新)東陽バスに事業が引き継がれ、同時に本社も移転した。法人上は、会社分割前後の新旧東陽バスに関連はないため、(新)東陽バス初代本社となるが、ここでは東陽バス4代目本社としたいと思う。

4代目の本社は2022年11月現在も変わらず同じ位置にあり「南城市佐敷字新里545番地」である。地図で示すと以下である。

Googleストリートビューで見てみると、元コンビニのような建物であり、居抜きで使用されている。会社分割という形で誕生した新会社であり、極力費用をかけないという考えであろうか。

元々本社に併設されていた観光部は、本社とは別の豊見城市与根に移転しているため、本社敷地内には数台の路線バス車両が停車しているのみである。

まとめると

以上を元に、東陽バスの本社の変遷をまとめてみた(いずれも現在の住所表示である)。

  • 初代:1951年6月1日~1954年12月4日 那覇市壺屋

  • 2代目:1954年12月5日~1974年7月26日 那覇市古波蔵2丁目1番6号

  • 3代目:1974年7月27日~2012年9月30日 那覇市壺川2丁目3番17号

  • 4代目:2012年10月1日~現在 南城市佐敷字新里545番地

(再掲)東陽バスの本社の変遷
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

注釈

  1. 沖縄バス30年のあゆみ(1981年6月 沖縄バス発行)p.16

  2. 昭和47年度 運輸要覧(1972年10月 沖縄総合事務局運輸部発行)p.46

  3. 那覇市 住所対照簿(新旧)古波蔵

  4. 那覇市歴史博物館 赤畑(アカバタキー)

  5. 沖縄 交通機関の歩み 戦前・戦後編(1979年7月 大城辰雄 著)p.192

  6. 那覇市 住所対象簿(新旧)字壺川・壺川


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