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120番・空港リゾート西線の歴史を調べてみた

那覇空港と名護バスターミナルを結ぶバス路線は、高速道路経由の111番/117番・高速バスのほかに、一般道路経由の120番・名護西空港線が存在する。このうち後者は、那覇空港から国道58号沿いの各バス停に停車しながら、名護に向けて北上していくが、かつて起終点は同じながら、途中のリゾートホテルの最寄りバス停を中心に停車する「120番・空港リゾート西線」というバス路線が運行されていた。

【沖縄バス/アーカイブスVOL.251】 ~空港リゾート西線☆~ 「アーカイブスVol.96」では別アングルの写真をご紹介した系統120番・空港リゾート西線☆この路線は那覇空港を起点に恩納村西海岸のリゾートホテルを経由しながら名護へ向かう路...

Posted by 沖縄バス株式会社 on Monday, October 23, 2017

1992年に運行開始

120番・空港リゾート西線の運行開始は、1992年8月のことである$${^1}$$。
那覇空港を起点とし、国道58号沿いのリゾートホテルを経由しながら、名護バスターミナルに至る路線であった。既存の20番・名護西線の急行バス的な位置づけもあったためか、系統番号は120番となり、運行本数も20番・名護西線から割り振られる形での新設であった。

沖縄総合事務局運輸部はこのほど、沖縄本島西海岸のリゾートホテルなどを経由する那覇-名護間の急行バスを計画している琉球バス、沖縄バス両社に路線免許を与えた。
両社の計画は、那覇空港から那覇バスターミナルを経て、国道58号沿いに連なるリゾートホテルに乗り入れながら名護市に至るもの。既存路線の名護西線の運行65回のうち11回を充てる。那覇-名護間の料金の大枠には変更はないが、一部経路の変更に伴う変動で区間料金が変わるところが出てくる。
名護西線には90数カ所の停留所があるが、急行便は約3分の1の主要28カ所に停車する。
両社は今年3月に免許申請。運輸部では、沖縄観光振興のためにも入り込みの多い夏場の運行開始に向けて免許した、と話しているが両社の社内調整に時間がかかり、運行開始は8月下旬になるもようだ。

琉球、沖縄バスに免許/那覇-名護 西海岸急行/今月下旬から開始(1992年8月15日 沖縄タイムス)

なお、琉球バスと沖縄バスによる20番・名護西線の共同運行開始は、1998年4月27日のこと$${^2}$$であり、同じ系統番号、路線名、経路ではあったものの、認可上は2社による競合運行路線であった。なお、1997年10月16日には、120番・空港リゾート西線を含めた那覇~名護路線の共同運行化に向けた合意がされた$${^3}$$が、実現する前に路線自体が廃止となっている。

各ホテルの敷地内にも乗り入れ

リゾートホテルへのアクセスを重視したバス路線であったため、単にリゾートホテル最寄りの既存バス停にのみ停車するというわけではなく、ホテルの敷地内にまで乗り入れていた。
以下に各市町村ごとに停車バス停を見ていく。

那覇市

那覇市内では、11ヶ所のバス停に停車しており、うち1ヶ所がホテル敷地内であった。

那覇市内の停車バス停
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

那覇空港から那覇バスターミナルまではノンストップ、那覇バスターミナルから泊高橋までは各駅停車となり、その先は東急ホテル前(現・第一天久)、那覇東急ホテル、安謝橋のみの停車であった。

ホテル敷地内への乗り入れは、那覇東急ホテルのみであった。国道58号上にも他の路線が停車する東急ホテル前というバス停が存在し、ホテル敷地へは約300mほどと至近距離ではあったが、バス停からホテルへは上り坂となっており、かつホテル自体が1951年5月創業の老舗ホテルであったことから、リゾートホテルの1つであるとして、わざわざ敷地内に乗り入れていたのであろう。
この那覇東急ホテルは、2001年1月をもって閉館されているが、120番・空港リゾート西線の方が先に廃止されている。

下記のサイトに閉館後の那覇東急ホテルと敷地内に設置されていたバス停の写真が掲載されていたので、紹介しておく。

なお「那覇空港と路線バスの歴史」でも書いたが、運行開始当初の120番・空港リゾート西線は、那覇市内においては、クローズドドアシステムが導入されており、那覇市内のみの利用は不可であった$${^3}$$。これは運行を開始した翌年の1993年11月19日をもって廃止され、以降は那覇市内を含めて全てのバス停での乗降が可能となっている$${^3}$$。

浦添市

浦添市内では、2ヶ所のバス停に停車していた。

浦添市内の停車バス停
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

浦添市内にはリゾートホテルが立地していないこともあり、ホテル敷地内への乗り入れは無かった。また、停車していた屋富祖と第二城間(現・SCSK沖縄センター前)の2ヶ所のバス停も、観光客向けというよりは、一般の利用者向けに市内中心部への乗り換えを考慮した選択だったようだ。

宜野湾市

宜野湾市内では、3ヶ所のバス停に停車しており、うち1ヶ所がホテル敷地内であった。

宜野湾市内の停車バス停
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

浦添市の第二城間を出発した後は、宜野湾市内の大謝名までノンストップであり、そこから宜野湾バイパスに入り、コンベンションセンター前、ラグナガーデンホテルと停車していた。
このうち、ラグナガーデンホテルが敷地内への乗り入れであった。

ちなみに運行開始から1年後である1993年11月1日時点では、ラグナガーデンホテルを経由しておらず、大謝名から国道58号をまっすぐ北上して、伊佐に停車していたようである$${^4}$$。ラグナガーデンホテルの開業は1992年7月2日のことであり、運行開始当初(1992年8月)時点ではまだ乗り入れるほどの需要を見込んでいなかったのかもしれない。なお運行開始から約2年後の1995年8月1日時点では、ラグナガーデンホテルへも乗り入れている$${^5}$$。

かつての宜野湾市内の運行ルート
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

北谷町

北谷町内では、1ヶ所のバス停に停車していた。

北谷町内の停車バス停
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

2024年5月現在も運行されている空港リムジンバスは、町内の下記の6つのリゾートホテルに乗り入れているが、いずれも120番・空港リゾート西線が廃止されたのちの開業であった。

ザ・ビーチタワー沖縄(2004年7月開業)
ベッセルホテルカンパーナ沖縄(2012年3月20日開業)
ラ・ジェント・ホテル沖縄北谷(2018年6月1日開業)
ヒルトン沖縄北谷リゾート(2014年7月2日開業)
レクー沖縄北谷スパ&リゾート(2020年3月1日開業)
ダブルツリーbyヒルトン沖縄北谷リゾート(2018年6月1日開業)

そのため、浦添市内と同様に、一般の利用者向けにうるま市方面への乗り換えを考慮し、謝苅入口にのみ停車していたようである。

嘉手納町・読谷村

嘉手納町内では嘉手納バス停のみ、読谷村内では伊良皆バス停のみに停車していた。いずれも他の路線への乗り継ぎを考慮した選択であろう。

嘉手納町・読谷村内の停車バス停
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

嘉手納町内には、浦添市と同様にリゾートホテルの立地がないため、停車バス停が1ヶ所のみとなるのは必然なのだが、2024年5月現在も運行されている空港リムジンバスは、読谷村内の3つのリゾートホテルに乗り入れている。うちロイヤルホテル残波岬は1988年7月開業であり、120番・空港リゾート西線の運行開始以前から立地していたリゾートホテルであるが、国道58号から離れた海岸沿いにあり、道を逸れてしまうと、北上した先にある恩納村内のリゾートホテル群への所要時間が伸びてしまうため、停車バス停からは外されてしまったのかもしれない。なおこの当時、ロイヤルホテル残波岬への路線バスとして、28番・読谷線が乗り入れており、これも敢えて120番・空港リゾート西線を立ち寄らせなかった理由かもしれない。

恩納村

恩納村内では、10ヶ所のバス停に停車しており、うち4ヶ所がホテル敷地内であった。

恩納村内の停車バス停
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

恩納村は、今も昔も数多くの大型リゾートホテルが立地しており、その多くが国道58号沿線に立地していることから、停車バス停も数多く設定されていた。ホテル敷地内では無いバス停についても、最寄りにリゾートホテルが立地するバス停であり、全ての停車バス停がホテル利用者を見込んだ選択であった。
なお運行開始から1年後である1993年11月1日時点では、仲泊バス停にも停車していたようである$${^4}$$。うるま市方面への乗り継ぎを考慮したものであったのかもしれないが、運行開始から約2年後の1995年8月1日時点で停車バス停からは外されている$${^5}$$。乗り継ぎ先であった48番・石川読谷線は、1990年4月$${^6}$$~1993年3月$${^7}$$の間に、那覇交通が撤退し、沖縄バスのみとなり、運行本数も1/3にまで減少したことから、乗り継ぎ路線としては適さないという判断かもしれない。

かつての恩納村内の停車バス停
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

名護市

名護市内では、8ヶ所のバス停に停車していた。

名護市内の停車バス停
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

恩納村寄りの海中公園前(現・ブセナリゾート前)、喜瀬、幸喜は、リゾートホテル利用者を見込んだ選択であったようだが、それ以北については、名護市内の一般の利用者をも考慮した主要バス停に停車する形であった。

偏った運行時刻

1日11本が運行されたが運行時刻は偏っており、上りとなる那覇空港行きは5時台~12時台のみ(名護バスターミナル発基準)、下りとなる名護バスターミナル行きは10時台~18時台(那覇空港発基準)となっていた。ホテルのチェックアウトの時刻を考慮すると、午前中には宿泊者は出発してしまうので、上り便は午前中だけの運行、沖縄への航空機での到着やホテルのチェックインの時刻を考慮すると、下り便は朝の通勤ラッシュが終わった時刻以降から運行すればよいという判断であろう。
なお、このようなリゾートホテル利用者に特化したダイヤ設定は、後に120番・空港リゾート西線を引き継ぐ形で誕生した「空港リムジンバス」にも引き継がれている。

空港リムジンバスに引き継がれ廃止

120番・空港リゾート西線は、1998年3月31日をもって廃止された$${^2}$$。赤字路線のためということではなく、新たに運行を開始する空港リムジンバスへ引き継ぐためであり、同時に白石グループが運行(企画・運営:ホット沖縄、バス運行:那覇交通)していたリゾートシャトルバス「コーラル号」も廃止され、空港リムジンバスへ一元化された。

琉球バス(長浜弘真社長)、沖縄バス(大城孝心社長)、東陽バス(高江洲義之社長)、那覇交通(金城実社長)の本島バス4社は20日、社長会を開き、那覇空港と本島中北部のリゾートホテル群を結ぶリムジンバスを、来年4月1日から共同運行することに最終合意した。これに伴い路線も読谷村残波岬方面と恩納村のリゾート拠点方面の2系統に整理される。4社による共同運
行は県内で初めて。観光立県沖縄の魅力アップとともに、4社の一般乗合部門の統合にも弾みがつきそうだ。
リムジンバスは、空港-国道58号-沖縄コンベンションセンター-残波ロイヤルホテルと、空港-沖縄自動車道-恩納村-ブセナリゾートの2路線。現在琉バス、沖バス両社が共同運行している空港西リゾート線(120系統)と、路線がほぼ競合するコーラル号(ホット沖縄主催)は廃止され、一本化される。

リムジンバス  4社共同運行で合意/来年4月、リゾートホテルを結ぶ(1997年10月21日 沖縄タイムス)
太字は筆者によるもの

120番・空港リゾート西線が廃止された翌日の1997年4月1日からは、20番・名護西線を那覇空港発着とした「名護西空港線」が運行を開始しており、系統番号は「120番」は「名護西空港線」に引き継がれた$${^2}$$。

これまで空港と各リゾートホテルを結んでいた空港リゾート西線は、今月1日からバス4会社で共同運行しているリムジンバスに変更されたため、空港と名護を結ぶ、名護西空港線として、再編成された。1日11本の運行がある。

名護線で共同運行/琉球バスと沖縄バス(1998年4月20日 沖縄タイムス)

120番・名護西空港線の運行開始当初は、運行本数や運行時間帯の偏りも120番・空港リゾート西線から引き継がれたようだが、2003年4月15日のダイヤ改正で増便され終日を通しての運行となり、2006年7月10日のダイヤ改正で20番・名護西線が大幅に減便される代わりに、120番・名護西空港線が大幅に増便され、20番・名護西線は早朝の名護行きと夜間の那覇行きのみの偏った運行となった。

脚注

  1. 沖縄バス60年のあゆみ(2011年3月 沖縄バス発行)p.41

  2. 名護線で共同運行/琉球バスと沖縄バス(1998年4月20日 沖縄タイムス)

  3. 5路線を共同運行 那覇-名護間/琉球、沖縄バスが合意(1997年10月17日 沖縄タイムス)

  4. 運賃及び粁程表 平成5年11月1日改定(1993年11月 沖縄県バス協会発行)

  5. 【沖縄バス/アーカイブスVOL.426】~空港リゾート西線☆~

  6. 平成2年度 業務概況(1990年7月 沖縄総合事務局陸運事務所発行)p.25

  7. 平成5年度 業務概況(1993年7月 沖縄総合事務局陸運事務所発行)p.25


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