支援事例「会社承継 どう進めたらよいか」
令和 2 年 8 月 2 日 沖縄タイムス 経済 7 面掲載
財務内容の把握 第一歩
◆ 企業名 T社
◆ 業 種 テナント賃貸、保守サービス業
◆ 所在地 本島南部
◆ 資本金 非公表
◆ 創 業 非公表
【相談】
T社の保守サービス事業に管理者として従事してきた。社長がリタイアを考えているが親族内に後継者がおらず、M&A(第三者承継)も検討したが断念した。自分で承継しても良いと思うが、どう進めていけばいいかわからない。
【回答】
T社はテナント賃貸業と保守サービス業を行っている。代表者がリタイアを意識し始めたとき親族内にふさわしい後継者がおらず、最近では廃業を考えるようになっていた。その経緯を知った相談者が後継者候補として手を挙げた。
一般的に親族外の後継者が事業承継する場合、会社の株式等を取得するための資金力が必要となる。そのため資金不足や経営者の個人保証の引き継ぎがネックになり、承継が難航することがよくある。承継を検討する場合は会社の財務内容を正確に把握することが第一歩である。
早速決算書類等をもとに分析してみると、会社の保有する賃貸用不動産の評価額が高いこと、代表者借入金もかなり残っていることの2点が大きな課題として浮き彫りになった。
会社所有の賃貸用不動産は、相談者が従事してきた保守サービス業と関わりのない資産であるため、評価額が高いことは、承継した時の重荷になってしまうのではないかという心配がある。また、多額の代表者借入金は、これまで代表者が事業のために提供した資金であるが、事業を引き継ぐ承継者は返済義務を負うことになり大きな負担となる。
これらの課題を前に、代表者を交えて検討した結果、保守サービス事業部門だけを相談者に引き継いでもらうことになった。そうすれば事業継続に最低限必要な資産、負債の移転ですませることができる。一方のテナント賃貸業は代表者が保有し、その後、相続により親族に承継させる方向で進めることになった。
T社の代表者は変わらず、相談者は新たに保守サービス事業の別会社を設立して必要な資産を引き継ぐ事業譲渡という形をとった。これにより多額の資金負担を伴わずに一部形を変えて事業を引き継ぐことができた。
今後は税理士等の専門家に譲渡の内容を整理してもらい、手続きを進めることにした。円満な事業承継ができるよう引き続きサポートしてきたい。(県よろず支援拠点コーディネーター・遠山康英)
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