KER試験の筆記試験対策講座に参加しました!

お元気ですか~?

11月8日に事前登録制の「KER試験対策講座」があったんで参加してきたんですが、絶対日本からの参加者が何人もいるだろうと思ったら私ひとりでした。(笑)

もちろんすべてエスぺラント語なので、B1レベルの受験者には厳しいものがあると思います。「配慮してゆっくり話す」と冒頭説明がありましたが、実際に「ゆっくり話してる感じ」だったのは最初の30秒くらいでしたからね…(笑)

でも、B1レベルの受験者にとっても、試験の責任者であるカタリン・コヴァチによる「対策講座」は気になると思います。というか、B1レベルの受験者のほうが対策講座、必要ですよね?

B2、C1レベルの受験者で、通知をちゃんと受けていたけど参加できなかった、本当は参加したかったというひとはまだもう1回おなじ内容の講座があるのでメールボックスをチェックしてみてください。もしわからなかったらお気軽にお問い合わせください。ただし参加資格があるのは11月28日の受験者と実施者のみです。

さて、内容に行く前に今回Zoomでおこなわれた「対策講座」の様子から。参加者は先生役のカタリンも含めて23名くらい。各地の実施責任者や試験運営チームのメンバーはわたくしもふくめて4~5人かな。アジアからの参加者はふたり(日本・中国)、ベルギーなどヨーロッパのひともすこし、あとはメキシコとブラジルの参加者が目立ちました。女性率は3割。レベルの高い講座ほど女性率が高くなるという印象があります。

ではさっそく対策講座(筆記試験)の内容を個人的な意見も織り交ぜながらさくさく書いていきますね。

まず受験前の話です。はじめにedukado.netにある実力判定表memtaksilo(ekzamenoj>referendumo>memtaksilo)を参考にして受験する級を決めましょう。日本語版は私が書いたものがもうすぐ公開されます。つぎにPDFが公開されているEsperanto, De nivelo al niveloという問題集があるので実際にこれを解いてみてもいいですね。ただしこの『De nivelo al nivelo』、解きようのない問題があったり、不適切問題があったりします。そこにつまづいていてはどうしようもないので、よくわからない問題や解答はさささっと通り抜けることが大切です。時間の無駄ですからね。

そして試験です。これは対策ともからんできますが、KER試験では配点を意識する必要があります。KER試験の筆記問題は大きく3つ(C1は4つ)の部分からなります。その各部分で「最低限取得しなくてはならない得点」が設定されているので、合計点が60%以上でも、どこかでその最低ラインを下回っていると不合格になります。

同時に「合計点」でしっかり6割以上とる必要もあります。ここで対策しやすいのが「手紙課題」です。ここで満点をとることは十分に現実的なので、この部分の勉強をしておくとよいでしょう。詳しくは後で述べます。

試験は「言語知識に関する問題Lingva parto(穴埋めや選択問題)」、「記述問題Skriba parto(手紙課題)」、「読解Lega kompreno」に大別されます。手紙課題が狙い目なのはすでに述べたとおりですが、まずLingva partoから説明します。

1.問題文をよく読む!
当たり前ですが、問題文をよく読んでください。こう書くとすごく当たり前のことを書いているようですが、KER試験の設問でつかわれるエスぺラント語には、標準的な日本語母語話者のエスペラント学習者にはなじみのない言い回しや合成語が出てくることがあります。「間違った表現をえらびなさい」なのか「正しい表現を選びなさい」なのか、要するになにが問われているのかをあせらずじっくり読んで理解する必要があります。

ただし、正直言って、B1の設問でも「この文だと中級者や上級者レベルのひとでも意図をくみ取りにくいよね」というものもあります。そういうときは、「解き方の例」が問題に載っているので、ひとまず落ち着いてその「解き方の例」に集中してみましょう。設問の意図がはかりかねる場合にはそれしかありません。あとは、そういう「何が問われているかわからない問題」が出たら、そこに時間をかけすぎないということも大切かもしれませんね。

2.回答は1つのみ!
たとえば「つぎの文の下線部に対応する疑問文をつくりなさい」という問題があったとします。(出典:『Espernato De nivelo al nivelo』)
・・・Maria somerumis en la montaro.
【maria 女性の名前, somerumi 夏を過ごす, mont-aro 山脈】
答えは「Kie Maria somerumis?」です。でも、「en kiu loko Maria pasigis someron?」も間違いではないですよね?
このように複数の正解がありうる問題というのがあります。このとき、答えを複数書いてしまうと得点になりません。いろいろな回答がありうると思っても、ひとつを選んで書いてください。

3.下に枠があるのを見逃さない!
長文の穴埋め問題では一番下に回答するための「枠」がありますが、本文に答えを書く人がいます。でも「枠」のなかを空欄にしたままでは得点は0です。これは結構よくある間違いらしいので気を付けましょう!ちなみにエスぺラント語とは関係ありませんが、ある試験で回答欄を間違えて大量失点したことある私には他人事には思えませんでした。気を付けましょう!

つぎは満点をめざすべき「記述問題Skriba parto」についてです。

4.「手紙課題」はテーマをひとつ選ぶ!
手紙課題では問題文が2つあり、そのうち1つのテーマを選びます。両方に回答してしまう人がいるそうですが、それでは得点になりません。ここは本来満点を取るべきところなので、2つのテーマに回答して0点というのは時間ももったいないし、本当に避けたい事態です。手紙課題は問題をざっとみて、回答しやすそうなほうを選びましょう!

5.相手は「友人」の設定であると心得よ!
手紙課題では「あなたは〇〇国の文通希望者からこういう手紙を受け取りました。以下の内容をすべて含める形で返事を書きなさい」というような問われ方をします。そのとき、相手の名前や性別など細かい設定が明示されていないことがあります。
しかし「手紙課題」では日付や締めくくりの挨拶などにくわえて「alparolo話しかけ」を含める「手紙の様式」に沿って書く必要があります。名前も性別もわからないのに、「〇〇さんへ」という呼びかけの部分をどうすればいいのかと思うかもしれません。このときは「相手の名前を適当に作る」または「Kara amiko」とか「Kara amikino」と呼びかけることで解決してください。
C1では相手が「大統領」という設定で、「嘆願書や抗議文を書きなさい」という設問もありえるそうですが、B1、B2では「友人レベルの関係」という前提なのだそうです。

6.メモをつかう!
手紙課題では指定された5項目くらいの要素を含めて手紙を書かなくてはいけません。問題を見た瞬間に書き始めて、即興的にまったく矛盾なく自然な文章を指定された単語数で書き上げてしまう人たちも世の中にはいますが、ふつうはそんなことはできないですし、満点をとるべき「手紙課題」で失点のリスクを冒すのは正直なところどうかなと思います。KER試験ではボールペンを使うので、何度も書き換えられないんです。
試験では白紙のA4用紙を使うことができます。まず各項目に対応する文をつくって、それをどの順序で提示するか考えて、回答用紙に書くのが最もよいです。要求されているすべての要素が含まれていれば、提示する順序などはまったく関係がありません。書き漏らしだけは避けなくてはならないわけです。

7.10行で書く!
手紙課題では「120語から130語」と冒頭に単語数が指定してあります。これをいちいち数えることになると思うのですが、採点者は「本文が10行」かどうかをみているとのことです。後述しますが、「①日付、②呼びかけ、③本文、④挨拶、⑤署名」で「③本文」が10行(100語程度)になるように、『De nivelo al nivelo』の問題をつかって練習してみましょう。

8.文字数の稼ぎかた!
手紙課題で要求される要素にすべて答えても、本文がぜんぜん100語程度にならないということはよく起こります。このときどのように文字数を稼ぐかは重要です。もっとも使えるのは「問題文を流用する」ということです。例えば、「あなたは手紙を受け取りました」という文言が設問にあったとします。そしたら「Kara amiko,」と呼びかけたあとに「Mi ricevis vian leteron hieraŭ vespere.」とすれば6単語稼げます!回答すべき要素のなかに「あなたの家の周辺の観光地について書きなさい」とあれば、「Vi demandis pri turismaj lokoj ĉirkaŭ mia loĝejo. (あなたはわたしの家の周辺の観光地についておたずねになりました)」とすれば8単語も稼げてしまいます!こういう感じで回答にほぼそのまま使える情報が問題文のなかにあるのです。それを活用しましょう!

9.「日付、よびかけ、挨拶、署名」はどうするか!
エスぺラント語では日付やよびかけには決まった方法がある、と考えるひと(つまり「こういう書き方は間違い!」と考えているひと)と、わりと幅広くとらえているひとがいます。KER試験はどうか。どうも『De nivelo al nivelo』をみていると、結構はばひろくとっているという印象です。しかし指針があれば初心者のひとは楽でしょうから、ここにそれを示します。
①日付:もし試験当日なら「La 28an de novembro, 2020」と書きます。La 28anの対格のnを忘れないように。
②よびかけ:「Kara amiko,」これで十分です。
③挨拶:しめくくりは「Dezirante vian sanon, kore salutas vin,(あなたの健康を願いながら、心からあなたに挨拶をおくります)[改行] amike via(友人として、あなたの)」としてこの文の「主語」である「署名者」に展開するように書くのが『エスぺラント四週間』(大学書林)などの教科書に出てくる書き方です。「Dezirante al vi kaj al viaj familianoj kaj amikoj sanon, sukceson, feliĉon, prosperon, belajn tagojn, kore salutas vin, amike via」などと相手に願うことを増やすことで文字数を稼ぐのはこの試験では邪道です。なおDezirante al vi ...の部分はまったく取ってしまって「Kore salutas vin, amike via」でも十分です。個人的にはこっちがおすすめ。なおamike viaamikeviaだけでも十分です。
④署名:KER試験では受験者は自分の名前を書いてはいけません!なので署名も偽名にする必要があります。なんでもいいと思うのですが、ここで悩んでも仕方ありません。私のおすすめは「L.L. Zamenhof」です。(笑)

最後は「長文読解Lega kompreno」です。ここも20点あり、参考時間は50分程度。できればここでもしっかり得点したいところです。

10.長文読解の問題は2つある!
長文読解の問題は2つあります。そのどちらも答えなくてはいけません。がんばりましょう!

11.下に解答用の枠があるのを見落とさない!
Lingva partoの部分でも書きましたが、解答用の枠があり、そこに答えを書き込まなくてはならないのに、問題文に書き込むひとが一定数いるようです。気を付けましょう!

12.単語が使えるのは1度だけ!
「つぎに示される単語群から適切なもの選び空欄におさめよ」という問題があります。「ここではestiも使えるけど、でもloĝiも使えるよね?」ということがあって、もしかしたら混乱するかもしれませんが、これはこういうふうに問題が作ってある、つまり正解が複数あるのです。単語がつかえるのは原則1回だけなので、ここで100%得点したいなら、パズルのように取捨選択していく必要があります。

13.正誤は文章から判断できるかどうかで決める!
長文読解には、長文を読ませた後、「つぎの断定が正しいか誤りか選びなさい」という問題があります。「正しければV(vera)と書き、間違いならM(malvera)と書きなさい」という問題ですが、「これってここに書いてないよね?」という質問もありえます。「”正”、”誤” 以外に”不明”って記号も必要では?」と言いたくなるわけですが、ここでは「本文だけで判断できるかどうか」で正誤を考えてください。たとえば「アンドレオ・チェさんは学校で宗教学の先生でした」という一節が本文にあり、「アンドレオ・チェさんは宗教学校の先生でした」という断定があり、正か誤か答えなさいという問題があったとします。(出典:『De nivelo al nivelo』)
「アンドレオ・チェさんは宗教の先生と書いてあるけど、この学校が宗教学校かどうかは書いてないよね?」という場合には、「宗教学校であるという断定」はまちがいなので「誤り(M)」と答えます。つまり本文からは「そのような断定はできない」というわけです。
また提示された長文のテーマについて、書かれていること以上のことを回答者であるあなたが知っているということもあるかもしれません。その場合にも、「事実としての正しさ」ではなく、あくまでも「本文に書かれているかどうか」で解答してください。これは結構重要なことだと思いますので、しっかりおさえておいてください。

ここからは試験そのものからは少し離れたアドバイスです。

14.終わっても確認する!
すごく早く終わるひともいるかもしれませんが、最後の1ページを見落としていたひとは過去に何人もいるそうです。各部分で最低得点が設定してあるので、1ページの見落としはそのまま不合格に直結する可能性もあります。なお、これまでのKER試験の歴史のなかで2ページの見落としをしたひともいるとのこと。しっかり最後のページを確認しましょう!

15.辞書は単語の確認にもつかえる!
たとえばrendevuoなのかrandevuoなのか迷うことがあるかもしれません。間違って覚えているかもしれません。余裕があれば自分の書いた解答が正しい単語で書かれているか、母音や子音レベルの間違いはないか、辞書をつかって確認しましょう。(なお2021年からの試験ではどの範囲で辞書の使用が認められるかはいまのところ未定なのだそうです。2020年までは辞書は単一言語辞書にかぎって筆記試験中はつねに使用できます。)

16.気分転換のために立ち上がるのもよい!
試験会場には備え付けの辞書があります。これをとるために立ち上がって、すこし歩くことで気分転換になります。

17.軽食、のみものの持ち込み可!
においの出るもの、音の出るものはアウトですが、軽食や飲み物の持ち込みが認められています。気分転換に活用しましょう!ちなみに私は試験中に「菊川の手延べそうめん(えらべる薬味つき)、サンドイッチ、おにぎり、飲み物各種など」をたのしんで、時間がなくなりかけました。気を付けましょう!

18.筆記用具はボールペン!
筆記用具は黒か青のボールペンです。消せるものは消えてしまうので、やめましょう!!!またボールペンは複数持参するのがおすすめですが、青と黒を1つの解答でつかうと不正をうたがわれることになりますので、やめましょう!!!

19.問題に間違いがあったら…
日本エスペラント協会が実施するエスペラント学力検定試験(エスぺラント検定)の過去問集(2016年)をみると問題にも模範解答にもかなりの頻度で間違いがあることに気づくと思います。研究教育部門がここまで間違えるってどういうことだろうと思うわけですが、しかし人間がつくっている以上、KER試験にも不適切問題が絶対出ないとは言い切れません。問題に間違いがあったら、問題用紙にチェックしておいてください。問題箇所をわかるように示しておおきく「?」をつけておくとよいと思います。

以上、なにか参考になることがあるといいのだけれど...

KER試験まであと3週間。大いにたのしみましょう!

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