No.1205 目端の利く男
私くらい年を取ると、「ついこのあいだ」と言っても、四半世紀前のことだったりします。
ある日の放課後、またしても禁止されている中庭でのサッカーに打ち興じている「むくつけきおのこ四人衆」がいました。家から学校にサッカーボールをわざわざ持参した用意周到なI君を呼びつけ、黒のマジック1本を手渡し
「ボールのここんところに、『贈、〇〇君へ!byI』と書け!」
と語気を強めて迫りました。
すると、I君は、
「つつしんでお返しします!」
とでも言うように、黒マジックにキャップをし、私の背広の内ポケットに押し込み、上からポンポンと軽く叩きました。賢い奴、目端の利くヤツです。
「そのサッカーボールは、うちの息子にプレゼントしてやってくれ!」
という私の熱い思いを、さりげなく、すげなく、やんわりと断りました。
「1本取られた!」のダジャレが似合うミニ事件でした。
私は苦笑することしきりでしたが、
「その機転は出し惜しみせず、勉学にも活用したまえ!」
と要らんアドバイスをしてしまいました。
その後、中庭では、いろんな草が我が物顔をし始めました。
「蹴り上げしサツカーボール虹を追ふ」
三浦慶子
※画像は、クリエイター・ゆうにゃん|老猫3匹と暮らす|介護士|大阪のおばちゃんさんの「虹」の1葉をかたじけなくしました。
「きもちも晴れやか」の説明書きがありました。大空からの絵筆に清々しさが伝わってきます。お礼申し上げます。