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No.767 「学ぶ」は「真似ぶ」、こんなところにも!

1月16日、午前8時からのTV「NHKBSプレミアム ワイルドライフ フローズンプラネット」(再放送)は非常に印象的でした。セイウチと天敵ホッキョクグマとの命をつなぐ攻防の映像がドキュメンタリーで綴られていました。
 
セイウチは、体重が1トン以上もあるといいます。その重い体を、「よいしょ、どっこいしょ!」とひきずるようにして、危険を冒してまで天敵のいる陸に這い上ってきます。大分弁で言うなら「やえーこっちゃねー!」(訳=「重労働は大変ですな!」)行いです。
 
何のために陸に上がり群れを作るのでしょうか?
 
セイウチと言えば、あの上あごから伸びた長い牙がシンボルマークです。ホッキョクグマに対抗したり、メスをめぐりオス同士が争ったりした時に、武器として使います。ホッキョクグマも牙が刺さると致命傷になるため、容易に手は出せないといいます。
 
ところが、海から上がったセイウチは、自分の好みの場所や一番良い真ん中の場所を確保しようと体重にものをいわせ、他者を押し分け、時には牙でどかない仲間をつついて場所を譲らせるという人間まがい(いや、人間がセイウチまがい?)のご乱行です。
 
そうまでする理由は、「日光浴」をするためでした。セイウチは温度で体の色が変わるほど敏感肌だそうです。温められると血管が膨張することから、太陽からの熱を少しでも多く吸収することは、北極付近の冷たい海域で生息する生き物にとって欠かせない行動のようです。彼らにとって、「日光浴はマスト」なのです。
 
さて、日光浴を終えたセイウチですが、例によって思い体を引きずって海にもどって行く姿の中に、不思議発見!な・な・な・何と、ゆっくりと坂を転がりながら海に近づいてゆく者がおりました。「そうかー、そう来たかー!」と私は目が点になり、唸りました。
 
「坂なのだから、転がった方が早いし、楽だな!」
或いは、本人の意思に背いて、偶然転がり始めてしまったことに驚きと感動とで、味を占めたのか?そんなことに気づいてしまった知恵者のセイウチ君がいたのでしょうね。
 
「イイネ!」「スキ!」
のボタンを脳内に押した仲間たちが次々に真似て、ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゆるやかに回転しながら降りてゆくのです。
「こりゃぁ、楽チンだわ!」
とでも言うように。
 
子どもは、「回転あそび」をすることで、三半規管が刺激され、バランス能力がつき、落ち着きや、集中力、指先の微細運動の発達まで促されるそうです。ひょっとしたら、「回転運動」で、セイウチたちは、新たな能力を開花させるかも知れません。
 
「学ぶ」は「真似る」から生まれたといいます。その極意は、「模倣」を通して生まれる「独創性」の尊さを意味するのでしょう。自らの体重ゆえに、考え、編み出された秘儀を「真似て学ぶ」ことで、セイウチたちは未来を切り開くカギを握ることになるのでしょうか?

21世紀を標榜するのは、人間だけではなさそうです。


※画像は、クリエイター・sasamiさんのスクラッチアートをかたじけなくしました。幻想的でロマンあふれる作品です。お礼申します。