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No.638 言葉の色も織る人

ひと昔前のある日、NHK総合TV「四季と心を紡ぐ〝色〟 染織家・志村ふくみの日々」を観ました。
「植物の精が宿っているのではないか?」
「植物の心の代弁者なのではないか?」
と思いたくなったのは、彼女の「色」を熱く語ったその言葉によってです。書き漏らした珠玉の言葉がいくつもある中で、かろうじて急いで書き写したメモがありました。
 
「(木苺の染色から)不安を持ったところに美がたゆたっている」
「色彩は植物の命、人間の手は、その色彩の命を奪っている」
「藍は、宇宙を内包する青」
「この季節にしか聞こえない植物の囁き、低い輪唱が聞こえて来る」
「縦糸と横糸が紡ぎ合わされると、まったく予期しない色が現れる。織り色という」
「紅は生きていて、私に応えてくれる」
「絹糸の白さを染色で汚す。だから美しく生かさねばならない」
「紅花は天の恵みで、たった一つの奇跡」
「人間よりも我欲の一切無い植物の方が魂の位が高い」
 
植物の持つ色を復活させたいと願い、志村ふくみさんは、野の草木から色を染め出し、自ら機を織ります。そこでは、染め付けた糸ばかりではなく、雄弁な魂の言葉も「トンカラリン」と音をさせて紡いでいました。織り上がり仕上げられ、衣紋かけにかけられた単衣の着物は、透き通るような光をまとって優しく揺れました。細部に神が宿っているかのようでした。
 
早起きは三文の徳?時計は、午前5時近くになっていました。

※画像は、クリエイターtakerumax_photoさんの「iPhoneの写真をプレゼント 4」です。有り難うございました。