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No.586 お悩み相談なら、ツ・チ・ヤ!

好きだなあ。雑誌「PHP」の2011年(平成23年)某月のお悩み相談のページに名(迷?)回答されたお茶の水女子大学の土屋賢二教授に「ほ」の字の私です。

「Q.『定年後、趣味を持ちなさい。』と世間でよく言われます。私は、今まで仕事一途、無趣味人間で生きてきました。一日中テレビを見ていても飽きませんし、人と話さなくても平気ですが、妻からは疎まれています。そもそも、趣味は必要なんでしょうか?

 A.趣味は、必要ありません。してもしなくてもいいものを趣味と呼ぶからです。必要もないのにもってしまうのが趣味です。趣味はもたないにこした事はありません。(…中略…)できれば、家族から『家の中でテレビばかり見ていてくれてうれしい』と思わせるのが理想です。第一に、ジェット機操縦、競走馬の馬主になるより安価だと強調しましょう。第二に、トランペットやバイオリン演奏に比べれば迷惑もかけないと主張します。しかし、主張だけでは不十分。目障りにならない地味な服装で小さくなって部屋の隅に座るなどの工夫が必要です。もちろん、お茶などは自分でいれ、奥さんの分もいれ、食器洗いを始め、家事も積極的にやります。その上で、奥さんには『遊んでおいで』と旅行などに送り出しましょう。その後、思う存分、テレビを楽しんで下さい。」

もう捧腹絶倒で、ひきつけを起こしそうになります。そうなった時には、治療代を請求しなければなりません。かく言う私も質問者同様、無趣味人間です。仕事で外に出るほかは、ひたすら引き籠っています。悟りを開けないのが、不思議なくらいです。

そんな私ですから、土屋先生がどんなアドバスをしてくださるか、とても楽しみでした。何せ、テレビ誕生(昭和28年)と同年生まれの私は、まさにテレビっ子世代です。
「家の中でテレビばかり見ていてくれてうれしい」
と言われると、豚以上に木に登ってしまいそうです。

ところが、土屋先生の「そう思わせる為の代替案」は、かなりハードルの高いものです。
①目障りにならない地味な服装で小さくなって、部屋の隅に座るなどの工夫をせよ。
②お茶は自分の分だけでなく妻の分も淹れ、家事も怠りなくせよ。
③妻には「遊んでおいで」と旅行などに送り出したりせよ。
と、女性の読者ファンを殊更意識したかと思われるような、迷回答です。私は、家でのんびりテレビを見るどころか、積極的に外に出て行きたくなりました。これが、先生の真の狙いなのか?

土屋先生には『ツチヤの貧格』(2008年、文藝春秋社)なるエッセイ集があります。「品格」としない訳は、お読みいただいて納得してもらう以外にありませんが、
「私は、今まで、一体、何に悩んでいたのだろう?」
と自分を取り戻させてくれるお話がてんこ盛りです。日々お疲れの方には、この本で憂さを取り除くことをお勧めします。笑い疲れるかもしれませんが…。