見出し画像

No.1191 その宝船?

赤穂の四十七士の一人、大高源吾(号「子葉」)は、 討ち入りの日の夕方、歳末のすす払いの煤竹を売りながら両国橋を渡っていました。偶然、そこで「茅場町の宗匠」と呼ばれる宝井其角と出会います。 其角は、落ちぶれた源吾の身なりを見て、この様子では再会もこれで最後かと思ったらしく、
「年の瀬や 水の流れと 人の身は」
(水の流れは止まらず流れていく様に、人の運命も分からぬものですな。)
と詠みました。その時、源吾は、
「明日またるる その宝船」
(明日になれば、長年の本懐を遂げることが出来ますよ。)
と応えたといいます。其角は、最初「その宝船」を「誰かに召し抱えられる本懐」と解釈し、不忠の者として嘲ったようですが、後になってその奥に秘められた「吉良を討ち果たす」という源吾の思いにはたと心打たれます。

「赤穂義士銘々伝 大高源吾」で、講談師がいかにも見てきたように語る臨場感ある一節ですが、一昨昨日、隣の班のゴミステーション横の花壇に咲いていた花に目を奪われながらそのやり取りを勝手にイメージしちゃいました。

私が想像したのは、風に揺れるニチニチソウ(宝井其角)が、
「春うらら 水の流れと その花は」(桜はいつ頃じゃろうか?)
チューリップ(大高源吾)も揺れながら、
「開花待たるる その宝船」(明日頃には、咲くんじゃない?)
花同士も、人の心と同じように心待ちにして女王の桜を話題にしているように見えました。「討ち入り」の段ではなく「心待ち」の段ではありますが。

九州の桜の開花は、例年より遅れているそうです。昨日の大分合同新聞(21面)には、日本気象協会の今季6回目の桜の開花予報が発表され30日と修正し、満開は4月8日(お釈迦様の誕生日)を予測していることを知りました。ワクワク、ウキウキ、ズキズキ(?)、ドキドキ(?)の秒読みが始まっています。宝船の帆を張る(春)のでしょうか?

「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」(在原業平)