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No.785 モヤっとからスキっとへ!

少女の身の丈は30cm、おかっぱ頭の髪の長さは12cmもあります。頭には赤いリボンが載せられています。赤い着物には、いくつもの梅の花の模様が彫られ、胸元高くに帯がキュートに巻かれた斬新なデザインです。東北地方の素朴な郷土玩具の「こけし」とは趣を異にする作品です。
 
ずいぶん前に知人から頂いたものですが、箱も説明書きもありません。ネットで調べたところ、同じ人形は見出せませんでしたが、ひょっとしたら「卯三郎こけし」というのかも知れません。

昭和の時代に群馬県の「榛東村(しんとうむら)」の作家・岡本卯三郎によって考案されたこけしのことだそうです。卯三郎は群馬県渋川でこけしを作り始め、その後、故郷の榛東村で本格的にこけしの製作を始めたそうです。
 
「こけし」の語呂が「子消し」「子化身」に通じたために堕胎や間引きされた子どもの慰霊をするためのものとも言われます。私は、貧しく苦しい生活を強いられた農村で、口減らしのために子どもが売られたり命を奪われたりして、その供養のために作られた人形だと思い込んでいましたので、頂戴した時、正直いって嬉しさよりも切なさの方を感じていました。
 
ところが、「こけし」の漢字は、木を削ってできたから「木削子(こげし)」と表記されたり、江戸時代の男児や女児たちの髪型、芥子坊主(けしぼうす)に似ていたから「小芥子(こけし)」と表記されたりしていたことが由来であることを知りました。
 
もともとは、江戸時代の末期にお椀やお盆を作る「木地師」(きじし)という職人たちが、温泉地のお土産玩具として作ったことが、こけしの始まりとかで、子宝に恵まれる事や子どもの健やかな成長を願う縁起物として作られたそうです。私の思いとは逆の産物でした。

また、ちょっと意外な「こけし」の形も知りました。
「所さんの 学校では教えてくれない そこんトコロ」で放映されましたが、爪楊枝の溝が「こけしをマネしたから」というのには驚きました。爪楊枝の先端をとがらせる時に、機械にセットした爪楊枝を高速回転して削っていくと、手に持つ側の木が焦げて黒くなり、見た目が悪くなってしまうそうです。その見た目の悪い焦げた部分を削り取るために溝を掘るのですが、爪楊枝がオシャレに見えるようにこけしを参考に飾り彫りされたのだとか。私の頭の中で、ヘーボタンが鳴り響きました!
 
「親思ふ 心に勝る 親心 今日の音づれ 何ときくらん」
吉田松陰(1830年~1859年)の歌を達筆で書かれたこけしを生徒の親御さんから頂戴したこともあります。戒めの言葉として受け止めながら、私はなんとか定年を迎えることが出来たのでした。「こけし」は、私にとっての「見守り人形」だったようです。

「さう言へば こけしに耳の ない寒さ」
 久保枝月


※画像は、クリエイター・Tome館長の、タイトル「【詩】秘めた想い」をかたじけなくしました。少女のもの思わしげな顔に目を奪われます。お礼申します。