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No.651 我が家のキラメくキメラ犬!

「キメラ」(chimera)とは、ギリシャ神話の空想上の動物「キマイラ」から、ドイツの植物学者ハンス・カール・アルベルト・ヴィンクラー(1877年~1945年)が命名したと言われています。もっとも、1916年にトマトとイヌホオズキの間で実験的に作りだした接木体を「キメラ」と呼んだとかで、本来は生物学上の術語だったそうです。
 
その「キマイラ」とは伝説上の生き物で、
「ライオンの頭、山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ異形のもの」
を言い、
「同一個体内に異なった遺伝子情報を持つ細胞が交じっていること」
だと言われています。
 
我が家にも、「キメラ」らしき者がいます。眉毛はダックスフンド、顎髭はシュナウザーそして、体型と尻尾は柴犬。みごとな「キメラ」です。人は、それを「ミックス犬」又は「雑種」と呼びますが、我が家のアイドル、いや、犬ドルのチョコちゃんであります。
 
天皇様の御璽は「八咫鏡(ヤタノカガミ)」「草薙剣(クサナギノツルギ)」「八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)」の「三種の神器」に象徴されますが、我が家の雑種犬の血筋は、どこの者とも正体が知れぬままです。獣医さんでさえも「何犬ですか?」と犬種を尋ねるくらいですから、まさに「三種の神器」ならぬ「三種の犬疑」なのです。
 
とは言え、この子が放つ「お散歩オーラ」が「半端ねー」のです。わが足元にやってきて見上げながら「キューン」と鼻を鳴らします。そ知らぬ振りをしていると、すかさず私の膝に右手を当てて、愛くるしい目をした顔を近づけます。私は、強力なスプレーでも浴びたように「一撃コロリ」とやられてしまいます。カミさんは、鼻を鳴らして笑います。
 
数年前に相棒と散歩途中に、出会った70代のお婆ちゃんから声を掛けられました。
「変わったワンちゃんね。何犬かしら?」
「さあ?ミックスなんですけどね、お医者さんも何犬かと尋ねるくらいなんですよ。」
「あら、それなら、大分犬(県)と答えたらいいわ!」
と笑顔で言いました。うまいっ!明るいおばさんギャグに、おじさん一本取られました。こんな会話も「お犬様」と一緒なればこそできるのです。初めて出会った人とでも心が通います。
 
そのたっぷりの「好きすぎる魅力」で、私は、暑苦しい夏でも身震いする寒い冬でも重い腰を上げることができるのです。いつしか15年目にもなり、チョコの目は見えにくくなったようで、階段を踏み外したり、路肩に足を取られたりするようになりました。また、足取りが重くなったり、食が細くなったりしてきています。若いころに比べると、歩く距離も半分以下になりました。それでも、この冬も「キラメ」く星座を仰ぎながら、何犬とも判定しかねる「キメラ」犬チョコのお伴をすることでしょう。肌寒くなってきました。
 
「曳かるる犬うれしくてうれしくて道の秋」
(高浜虚子に師事した富安風生の句)

※画像は、我が家のチョコ。地味な目と、穏やかな性格のういやつです。