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No.1100 邂逅えて、スッキリ!

昨日のコラムで紹介した名言、
「どんな不幸を吸っても、吐く息は感謝でありますように。」
には聖書か何か出典がありそうに思い、調べました。興味深い記事がみつかりました。

この名言を広く紹介されたのは、シスターの渡辺和子さんでした。

       それでも感謝      シスター 渡辺和子
 「感謝なんて、とんでもない」としか思えない出来事があるものです。私が50歳でうつ病にかかり、「神さま、なぜ、どうして」と詰め寄りたくなった時も、そうでした。
 何も出来ない。死んだ方が良い」とさえ考えた私を、病院の一人部屋に置いておけないと考えたシスター達は、修道院に連れ戻してくれました。「今まで人一倍働いたのだから、少しお休みなさい」と言ってくれました。大学の学長と修道会の管区長の両方を兼ねていた私への優しいいたわりの言葉でした。
 修道院に見舞いに来てくれた1人の精神科の医師は、「この病気は信仰と関係ありません。きっと快くなります」と慰めてくれ、他の医師からも、「運命は冷たいけれども、摂理は温かいものです」と言われて、うつ病になったのも、神の摂理だと考えるように、自分に言いきかせたものです。
 もとの自分に戻るのに、2年かかりました。今でもストレスが溜まると、うつ気味になることがあります。
 そんな私が、それでも感謝できるのは、病気をしたおかげで、他人に厳しかった私が、少し優しくなれたことでした。さらに「摂理」だったと思うのは、うつになり易い学生たちに、「私も、うつ病になったのよ。きっと快くなるから、辛くても我慢しましょうね」と、きれいごととしてでなく、言えるようになったことです。
 「シスターもですか」と驚きながらも、安心した顔になる学生の顔を見て、「やっぱり感謝」と言えるようになりました。神さまに、「あの時は、お恨みしてごめんなさい」とお詫びする私になりました。すべては恵みの呼吸なのです。どんな不幸を吸っても、はく息は感謝であるよう心掛けたいと思います。

「心の糧」アーカイブ(2014年6月)より

そして、その渡辺和子さんご自身が、あの名言を述べた人物について語っておられた記事を見つけました。それは、茅ケ崎恵泉教会でのお説教の中にありました。

 「生きる喜び」
 渡辺和子シスターの言葉を紹介します。
 『私たちは、この世にあって、いつも喜びに溢れて生きていられる訳ではありません。むしろ、生きることの難しさに悩み、生きることに疲れていることの方が、多いのではないでしょうか。しかし、こういう暗い時間、重苦しい経験は、決して無駄でなく、また無駄にしてはいけないのです。このような経験があって始めて、他人の辛い日々を、少しでも理解することができるのです。河野進という牧師が、このような詩を書いています。「天の父さま/どんな不幸を吸っても/はく息は感謝でありますように/すべては恵みの呼吸ですから」。辛いことも悲しいことも「すべては恵みの呼吸」であって、その中に神の愛が隠されていると信じることこそは、生きる喜びを産み出す一つの秘訣なのです。』
 愛の主が、どんな時にも共にいてくださり、最後には、すべてを益としてくださると信じる時、不幸を吸っても感謝を吐くという、恵みの呼吸が出来るのでしょう。ある人が、とても落ち込んだ時に、聖書の中の喜びという語を数えたところ、八百もあったそうです。その中の一つ、『主を喜び祝うことこそ、あなたたちの力の源である。』(ネヘミヤ記8:19)

日本キリスト教会茅ケ崎恵泉教会「生きる喜び」(2016年10月30日)より

牧師・河野進(1904年~1990年)氏は、和歌山県の出身。日本基督教団玉島教会の牧師で詩人。日本キリスト教救ライ協会理事、「聖良寛文学賞」を受賞された人でもあるそうです。1976年勲五等瑞宝章を受章されていました。
 
渡辺和子(1927年~2016年)さんは、北海道旭川の出身です。父は、陸軍将校の渡辺錠太郎です。父親の転勤で東京へ移り、和子さんが9歳の時に二・二六事件(1936年)が起きました。当時、陸軍大将で教育総監だった父親は青年将校たちの凶弾に斃れた時、その惨劇を眼前で見た悲運の女性です。カトリック修道女となり、ノートルダム清心学園理事長を務めました。また、1984年にマザー・テレサが来日した際には通訳を務められた方です。『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬社、2012年)は、200万部を超えるベストセラーにもなりました。
 
その渡辺和子さんが務められたノートルダム清心女子大学の正面玄関には、牧師・河野進さんが書かれた小さな詩がかけられているそうです。
「天の父さま
 どんな不幸を吸っても
 吐く息は感謝でありますように
 すべては恵みの呼吸ですから」

行き合えたような、邂逅えたような心持がして、なんだか、とてもスッキリしました。そして、信仰の言葉と力を強く感じさせられました。


※画像は、クリエイター・kaka.さんの「日没の風景です。教会と沈む太陽をおさめました。」という1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。今日も、吐く息の感謝を感じながら、お話が行われることでしょうか。