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No.641 心のサプリメント

数年前の12月30日、平成元年3月に卒業した教え子たちがクラス会を催し、招いてくれました。当時、彼らは既に44歳になっていました。会社でも中堅的存在で、バリバリ活躍している年代です。私は62歳になっていました。
 
その中の一人T君は、豊後高田市のビニールハウスで花卉栽培に勤しんでおり、淡いピンクのスイートピーを手みやげにと持参してくれました。仄かな甘い香りが身を包みます。
 
腰の落ち着かぬ人生を送っていた彼でしたが、漸く「天命を知る」に至ったのでしょう。あちこち回り道をしたように思えましたが、「急がば回れ」ということだったのかも知れません。日焼けした顔や、一層厚みの増した筋骨質の体には、強い思いと努力の証のような輝きがありました。
 
「花言葉は?」
と彼に訊いたら、
「さあ…。」
という何とも心もとない返事です。花のアピールポイントだと思ったので、同級生のヤマトナデシコにインターネットで調べてもらったら、な・な・何と「青春の喜び」「別離」「門出」「優しい想い出」だと教えてくれました。今はまだ少し早いけれども、春の花としておなじみです。
 
高校卒業の時には、4半世紀後に再会を約した「別離」と「門出」がありました。近況報告を語る彼らの中に、楽な人生を送っている人は、一人もいませんでした。しかし、「優しい想い出」の主たちは、笑い皺を刻みながら、何度も何度も杯を傾けて「青春時代の再会の喜び」を明日への力に換えようとしていました。同窓会は、心のサプリメントでしょうか?

第17回「伊藤園おーいお茶新俳句大賞」(2006年)に、こんな入賞句がありました。
「同窓会みんな大人の仮面脱ぐ」
(京都府、金森景子、22歳)

※画像は、クリエイターRyoko Yunokiさんのタイトル「スイートピー Sweet pea flower」を使わせていただきました。お礼申し上げます。