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No.756 「なってみりゃ あの年寄りは 偉かった」

「シルバー川柳」(全国有料老人ホーム協会主催)は、21世紀となった2001年から始まったようで、すでに立派に成人しています。5・7・5に生活や思いを上手に詠みこむ遺伝子が、日本人には組み込まれ、受け継がれているように思います。

しかし、回を重ねると、どうしても似通った句や言葉を変えただけの句も生まれます。やはり初期の作品は、独自の輝きと勢いがあり、亜流となった作品とは一味違います。その最初の年の作品を抜粋してご紹介します。

第1回シルバー川柳(平成13年、 応募総数:3,375作品)
「『お若いわ』その一言でお得意さん」
(東京都 81 歳 女性)

「すらすらと嘘が言えますボケてない」
(静岡県 78 歳 男性)

「人恋し恋とは違う人恋し 」
(宮城県 75 歳 女性)

「化粧する昔話も化粧する」
(三重県 70 歳 男性)

「三回忌頃から光る未亡人」
(大阪府 70 歳 女性)

「次の世も一緒と言えば妻は NO 」
(山口県 67 歳 男性)

「主治医には 内緒 鍼灸まむし酒 」
(東京都 63 歳 男性)

「逝く日まで恋をする気の紅を買う」
(大阪府 61 歳 女性)

「なってみりゃあの年寄りは偉かった」
(神奈川県 61 歳 男性)

「昔酒、今は病院はしごする」
(神奈川県 59 歳 女性)

「夫より三歩前行く老後かな」
(和歌山県 59 歳 女性)

「売るほどの病を持って長生きし」
(新潟県 58 歳 女性)

「昼寝して『夜眠れぬ』と医者に言い」
(大阪府 57 歳 男性)

「苦虫を永年噛んで歯も抜けた」
(大阪府 53 歳 男性)

さて、では、22年後の去年のシルバー川柳では、どんな世界が見られたか、ご参考までにこれも抜粋でご紹介します。「時代を写す鏡」とはよく言ったものだと思います。

第22回シルバー川柳(令和4年、 応募総数:14,639作品)
「誤送金 待てど暮せど 来ぬわが家」
(埼玉県、86 歳、男性)

「入れ歯どこ 冷蔵庫です 冷えてます」
(北海道、85 歳、男性)

「ご飯つぶ 付いているから 食べたはず」
(神奈川県、81 歳、男性)

「どうしましょ 三個あります マヨネーズ」
(高知県、68 歳、女性)

「知恵袋 年の功より YouTube」
(大分県、67 歳、女性)

「WEB予約 予約できたか 電話する」
(群馬県、65 歳、男性)

「兄弟で ひとり薄毛の 変異株」
(東京都、62 歳、女性)

「実は俺 点滴、湿布の 二刀流」
(佐賀県、60 歳、男性)

「見逃した はずのドラマに 見覚えが」
(神奈川県、57 歳、女性)

「お年玉 持続可能か 聞くな孫」
(熊本県、54 歳、女性)

「俺を見て 御先祖様と 孫が言う」
(埼玉県、53 歳、男性)
 
あなたは、どの句に共感されましたか?私は、第1回の作品、
「なってみりゃあの年寄りは偉かった」
(神奈川県 61 歳 男性)
に「ほ」の字です。実感を伴って迫ってくるのを感じます。凄い先輩ばかりです。


※画像は、クリエイター・luminiisanさんの、タイトル「花に逢う」をかたじけなくしました。福寿草の花言葉は、「幸せを招く」だそうです。