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No.818 お嬢を待った黄色い花

画像は、わが陋屋の庭に咲いた迎春花(黄梅)です。可愛い黄色い花が、爽やかなそよ風に揺れています。そのさまは、「幸福の黄色いハンカチ」のラストシーンを思わせました。
 
刑務所帰りの夫勇作(高倉健)を待っていたのは、妻光枝(倍賞千恵子)が鯉のぼりの竿にかざしてあった黄色いハンカチでした。「もし、まだ1人暮らしで俺を待っててくれるなら…鯉のぼりの竿に黄色いハンカチをぶら下げておいてくれ。」と刑務所から光枝に書き送った手紙の返答のように。この作品には、二人にしか滲み出せない哀愁や歓喜がありました。しみじみとして胸に深くしみいる作品でした。
 
わが家のミックスで中型犬のチョコは、5月に15歳を迎えますが、今年に入ったのを見計らったかのように急に元気がなくなりました。家の中で、立ち止まったまま考え事をしている風にじっと動かなくなったり、水を飲みこむときに咳が出たり、食が細くなったり、散歩の動きが緩慢になり路肩の穴に足を取られたり階段を踏み外したり、歩く距離が短くなったりしています。家に戻ると疲れるのか、寝ている時間が多くなりました。明らかに老化の現象だろうと思っていました。
 
そのうちに、お腹にだんだんしこりのようなものが幾つか目立ちはじめ、2月8日に動物病院で診察してもらった所、「乳腺腫瘍」と診断されました。右半分は悪性らしく、すぐに手術で取り除いてもらいましたが、左半分は組織検査の結果悪性ではなかったので残して、様子を見ることにしました。

さらに退院後2週間ほどして、今度は血尿が見られるようになり、1か月後には少しずつお腹が膨らんできたように見えます。慌てて再び病院で診察してもらったら、今度は「子宮蓄膿症」という診断です。その日のうちに、子宮の摘出手術と膿を出す処置が行われました。あれこれ考えれば、早い時期に避妊手術をしておいた方が良かったのかもしれません。このような苦しい思いをさせるようになろうとは夢にも思いませんでした。

昨日は、術後の経過が順調とのことで、3日目で退院してきました。子宮内に溜まっていた膿は1,000ccもあったとかで、信じられない大きさの瘤になっていたことを摘出後に撮った写真で見せてくれました。早く気づいてやれなくて後悔することしきりです。つねに体を触って異状がないかチェックすることの大切さを思い知らされました。

チョコがいなかったこの数日は、本当に寂しい時を過ごしました。当たり前の時が、いかに尊いものであり有り難いものであるかを犬に教えられた気がします。そして、老いてゆくことの姿や意味を、チョコは飼い主に示してくれたようにも感じました。

昨日は、そんな我が家のお嬢を、黄色い花がたくさんで迎えてくれました。私には、幸せの小さな黄色いハンカチのように見えました。