No.1060 日本の母ちゃん!
意外なことに、ハッと驚かされることがあります。
その昔、「さんまのスーパーからくりTV」というのがありました。調べてみたら、1992年(平成4年)4月26日~2014年(平成26年)9月7日まで、20年以上に亘り毎週日曜日の19:00から放送された長寿バラエティー番組でした。
その番組の中に「ビデオレター」があります。その2002年(平成14年)5月26日の放送で大変驚かされたことがありました。年月日まで書けるのは、今から21年前の学級通信に紹介してあったからです。
そこには、あるお父さんが、東芝日曜劇場のドラマの一節を真似てプロポーズしたという話が語られていました。その一節とは、
「貧しいから、あなたに差し上げられるものといったら、柔らかな5月の若葉と精一杯愛する心だけです。でも結婚してくれますね。」
ドラマ「天国の父ちゃんこんにちは」は、森光子扮する下着の行商(パンツ屋)の母ちゃんが、父ちゃんを亡くしても、2人の子供を育てながら、誠実にひたむきに、何よりも明るく生きるド根性の女性と家族のヒューマン物語です。
その母ちゃんが、貧しいけれども心の豊かな青年だった父ちゃんからのあのプロポーズを乙女チックに、懐かしそうに、照れながら、目を輝かせて思い出すシーンがとても印象的です。父ちゃんの、優しい響きと愛情に満ちたこの言葉にズキュン。
「でも結婚してくれますね。でも結婚してくれますね。」と余韻のように母ちゃんが繰り返すのですよね。そうやって亡くなった父ちゃんを偲びます。
ネットで探してみましたら、1966年(昭和41年)~1978年(昭和53年)まで不定期に放送されていたとありました。あれ?毎週じゃなかったっけ?私が13歳~25歳の頃まで続いた心温まるホームドラマでした。私は、ことある度に語られるあの父ちゃんからのプロポーズを、いつの間にか覚えてしまっていました。
その「パンツ屋の母ちゃん」の名セリフ「5月の歌」を使って本当にプロポーズしたと言うお父さんが、2002年に「ビデオレター」に現れたのです。まさに唐突な衝撃でした。
その彼も、同じような境遇で、意中の人に述べる思いをあの言葉に託すほど惚れ込んでいたのでしょう。当時49歳の私でしたが、こんな形であの名台詞に再会できるとは…。30年もの時を一瞬にして遡りました。
46歳~58歳までパンツ屋の母ちゃん役を演じ、「日本の母ちゃん」と呼ばれた大女優の森光子さんは、11年前の2012年(平成24年)11月に満92歳で永眠されました。日本一の「でんぐりがえし」の姿を観客の目に焼き付けたまま。
※画像は、クリエイター・すなおな話さんの、タイトル「インクイラスト6/ギャラリー一覧」から洗濯日和の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。