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No.583 知るは楽しみ?いや、驚きです。

私には、どこにでもフラッと立ち寄れる好ましからぬ癖があります。その日も、招かれもしないのに進路指導室に闖入した時のことであります。
 
「今日も暑いけど、一服の清涼剤の様なスキッとする話はありませんか?」
と謎かけしたら、嫌な素振り一つ見せずに
「愛のある国はどこでしょう?」
と、「スキッと」を「好きっと」に拡大解釈されたクイズを出してくれたのは室長のY先生です。

返り討ちに遭ってたまるかと思い、とっさに、
「アイスランド(愛す国)?」
と答えましたが、「ブブーッ!」と容赦ない音声ブザーです。正解は、
「Republic of Slovenia」(スロベニア共和国)
でありました。
「へッ?」
ハトが豆鉄砲を食らったかのような顔をしていた私を見かねてか、解説を加えてくれました。
「長ったらしい国の綴りの中に『Love』が入ってるでしょ?」
 
「ああ、なるへそ!」
オジサン、1本取られました。いえ、私のオツムでは、発想すらできませんでした。スッキリするどころか、ハッキリとあんぽんたんを自覚しました。

スロベニア共和国は、イタリアの東隣にあり、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国からの独立国だそうです。「スラブ」は「栄光」や「名声」を意味する sláva に由来しているとも、「言葉」や「会話」を意味する slovo に由来するとも言われるそうですが。何だか一つ賢くなった気がしています。
 
そういえば、好きなクイズにこんなのがあります。
「世界で一番長い英単語は何?」
と、宮沢賢治先生は、花巻農学校の生徒に宿題として調べさせたそうです。

生徒たちは、英和辞典を一晩中めくって丁寧に調べてきて、一番長い単語をそれぞれ自慢げに出し合ったといいます。その昔、人物系ドキュメンタリー教養番組と言われたTV番組『知ってるつもり?!』に記録映像で登場した宮沢賢治の教え子(当時、90歳代)が、懐かしそうに語っていました。

私の答えは、
「longest」
でした。ところが、賢治先生の答えは違っていました。
「smiles!」
と言って、ニコッと笑ったといいます。理由は、
「単語のsとsの間が1マイル(約1,6km)もあるから、一番長いでしょう!」
というわけです。徹夜して一番長い英単語を探してきた生徒たちは、みんなその話を聞いて、
「なーんだ!」
と大笑いしたそうです。教室は、まさにsmilesです。オチもみごとな賢治の学習指導法にやられました。
 
では、本当に長い英単語は何かと言うと、デオキシリボ核酸(DNA)の化学名が、何と20万7000字で表されるのだと知りました。DNAは、膨大な元素から構成されているので、化学名は信じられないくらい多量になるそうで、原稿用紙でいうなら518枚、論文などでは簡略化された表現で、「5'-d(AGCT)-3'」と書かれるのだそうです。

もう、この記号でさえ意味不明であって、そこに笑いはありません。ただ、あるのは「どこにも、ないよな、あいことば」の「DNA」でした。