No.771 猫の怪(かい)
♪ 忘れられないの~ あの人が好きよ~
ご存知(?)、ピンキーとキラーズの大ヒット曲『恋の季節』(1968年=昭和43年)です。ピンキーこと今陽子は、太陽のような明るさをもった健康的な17歳でした。
しかし、こちらの「恋の季節」は猫の世界です。あと1か月もすると、「近所迷惑」の四文字など眼中になく、恋に盲目の猫たちが、真夜中も朝方もなんのその、
「フー」「ウーワウー」「ギャー」「シャー」
とだみ声や甲高い声を張り上げ、唸り、威嚇・牽制し、喧嘩を始めます。
「猫の恋」は初春の季語だそうです。
「猫の恋天下無敵の声あげて」岩井善子
猫は夜行性で、暗闇でもモノがよく見え、人の目の7分の1の光の量で十分だとかいいます。恋敵を見定め、追い込み、決闘を申し込む。猫の世界の恋物語に新旧の別は無さそうです。それゆえに、
「恋猫の眼ばかりに痩せにけり」夏目漱石
の句も納得です。
「またうどな犬ふみつけて猫の恋」松尾芭蕉
「またうど」は「全人」のことで「律儀で真面目」の意味です。まじめな犬が、間の抜けた律儀さで門の番をしているのに、恋に狂った猫がこの犬を踏みつけて外に出て行ったというのでしょう。
「何が起きたんだ?」
というような、きょとんとした犬の顔が思い浮かびます。
「あまり鳴て石になるなよ猫の恋」小林一茶
一方で、愛人との別れのあまり(愛人を待ちわびるあまり?)嘆き悲しんで石になった望夫石伝説でも思い起こしそうな江戸時代後期の俳人の句もあります。
そうかと思えば、
「鏡見ていざ思ひきれ猫の恋」大島蓼太
猫を詠んだのか、人を詠んだのか分かりませんが、どちらも諦めの悪いのが恋心というものでしょうか?私にも、うん十年も前に思い当たることが…。
彼らの恋路を邪魔して、馬に蹴られようとは毫も思わなかったのですが、大学受験の一般入試の前夜、福岡の旅館で、猫の恋の「空回り」いや「胸騒ぎ」いや「大騒ぎ」に遭い、その波状攻撃に目が冴えてしまい、大いに困ったことがあります。
受験戦争中にとんだ伏兵が現れたものだと観念しましたが、結局、受験した同級生3人が3人とも合格した訳ですから、寧ろ「生きた招き猫」だったのかも知れません。引率してくださった先生も驚きの表情でした。
センター試験が終わり、本番はこれからです。受験生の方には、耳栓を持つのもよろしいかと…。
※画像は、クリエイター・ゆりがえるさんの、タイトル「KYOTO no AKI Part2」をかたじけなくしました。何かやってくれそうな猫の風情です。お礼申します。