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No.723 「言葉の力」に魅せら

旧中津藩士であり、蘭学者として、著述家として、また思想家として、さらに教育者として、文字通り「八面六臂」の活躍をした男、それが天保5年12月12日(1835年1月10日)に生まれた福澤諭吉です。明治維新の起こる33年前のことです。
 
生涯に数々の業績を残した福澤諭吉は、明治34年(1901年)2月3日、満66歳で病没しました。その没後60周年という事で、昭和37年(1962年)に中津市と慶應義塾大学が共催して始められたのが「福澤諭吉記念全国高等学校弁論大会」です。
 
昭和37年といえば、横綱大鵬が活躍した年、サッカーワールドカップでブラジルが連覇した年、戦後初の国産旅客機YS-11が完成した年、マリリン・モンローが怪死した年、ビートルズがデビューした年、首都高速1号線が開通した年、中尾ミエの「可愛いベイビー」や橋幸夫・吉永小百合の「いつでも夢を」がヒットした年、「ベン=ケーシー」や「コンバット」や「隠密剣士」や「てなもんや三度笠」の放送が始まった年でもあり、昭和28年生まれの私としては、涙無くしては語れない思い出の多い年でした。
 
その「福澤諭吉記念全国高等学校弁論大会」が、去年、令和3年(2021年)12月に第60回目を迎えました。昭和37年に17歳だった出場弁士は、喜寿を迎えられたことでしょう。それほどに歴史ある大会と位置付けられるまでに成長し、数々の優秀な弁論を生み出しました。福澤大会のお手柄だと思います。
 
例年、12月初旬に中津文化会館で開催されるこの全国弁論大会の目的は、
①福澤諭吉の偉業を顕彰する
②弁論を通して次世代を担う高校生が明るく健全な社会の発展に寄与するための契機とする
③全国の高校生同士の友好を深める
というものだそうです。中津市と慶應義塾大学がタッグを組んで、未来志向し、春秋に満ちた若者たちを育てようとする大きな志に打たれます。「弁えある高校生の論」に期待感は大です。

今年の第61回大会は、12月2日に催されました。基準弁士を含め北海道から沖縄県までの28人が熱弁を振るいました。その結果、「言の葉は紡ぐ」と題して発表した東筑紫学園高等学校(北九州市)2年生の田中千夏さんが、昨年の大会に続き最優秀賞に輝きました。大いなる変化や激動の時代を乗り越えて未来を紡ぐ言葉の力を訴えたもので、審査員から高い評価を得ました。

さて、昭和59年(1984年)11月1日から日本銀行の1万円紙幣として採用されてきた福沢諭吉の肖像ですが、令和6年(2024年)からの新1万円紙幣は、渋沢栄一へと肖像が交代されます。そこで、令和3年(2021年)“オールなかつ”で重点的に福沢諭吉を顕彰する「不滅の福澤プロジェクト」をスタートさせました。様々なPR事業を展開し、中津市と福澤諭吉の認知度を高め、親しみを持ってもらうプロジェクトだそうです。
 
今後、「不滅の福澤プロジェクト」と冠して「福沢諭吉記念全国高等学校弁論大会」は継続されることでしょう。世界の情勢を見るに、ますます「弁論」や「討論」の意味や真価が問われる時代が訪れようとしています。若者たちの「言葉の力」に一層期待しています。
 
「緑蔭の言葉の円さ風来る」
飯田龍太(1920年~2007年)

※画像は、クリエイター・わたなべ - 渡辺 健一郎 // VOICE PHOTOGRAPH OFFICEさんの、タイトル「四角いお金」をかたじけなくしました。お礼申します。