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【レポ】ブラザーミュージアム

今回はブラザーミュージアムさんに行ってきました。
特にミシンに興味があったわけではないのですが、以前購入した企業博物館の紹介同人誌に掲載されており、名古屋市内でアクセスも良かったため行ってきました!

現在感染対策のため、ネットからの事前予約が必須となっています。人数制限がありますので先着順です(私が行ったときはかなり空いていて回りやすかったです)。

1.ブラザーの歴史

まず企業さんについて。今回の展示を拝見して知りましたが、ミシンの製造からはじまり、タイプライター、現在はプリンター、カラオケの機械等も製造する、とても多様な製品を作る企業さんでした。手広い…。

代表的な製品を実際に見ることができます

自動車メーカーのトヨタやスズキも元々は織機を作っていたので、時代の流れにあわせて、時に先取りして、会社としての生き残りを図る姿は熱いですね。いずれの製品にしても、人々の生活を豊かにするために、自分達ができることを考え、選択し、進む道を定めていく様を見るのは企業の歴史に触れる上で胸熱ポイントです。語り出すと止まらないのでこのへんにしますが。

ブラザー工業、その名の通り、創業者がご兄弟です。ミシンの国産化及び輸出を目指し、創業されたようです。

当時日本にはすでに海外のミシンが輸入されていましたが、壊れたときに部品がなく、修理が出きる人間もいない状況で、手先の器用な職人さんが部品を手作りして修理をしていたようです。そんな職人さんの一人が創業者兄弟のお父様で、小さなミシンの修理工場を営まれていました。

お父様が亡くなった後、ミシンの国産化を目指して兄弟は現在のブラザー工業につながる会社を創業。多くの困難を乗り越え、輸入製品であったミシンを輸出産業にするまでに至りました。その後は時代の要請に応じてミシンで培った技術を生かした意欲的な製品を多く発売。高品質でお客さんに寄り添う製品を数多く生み出す会社となりました。

お父様の「安井ミシン商会」を「安井ミシン兄弟商会」に改名。仲のよさが伺えます

またはじめて知りましたが、海外からミシンをはじめて日本に持ち帰ったのはジョン万次郎さんらしいですね。なかなか大きな機械は持ち帰れないので、西欧の技術力が詰まった、かつ持ち運びのできるミシンはうってつけだったようです。子孫の方のインタビューでは、母親のためにミシンを持ち帰ったとも伝わっているが、下級武士である自分が最先端技術を持ち帰ることへのやっかみ等を誤魔化す目的もあったのではと分析をされており、興味深かったです(映像で見れます)。

2.ブラザーミュージアムとは

所在地は愛知県名古屋市瑞穂区。基本的には平日開館ですが、8月は一部土曜日も開館していました。企業博物館は結構土日休みのところが多いです。事前に要チェック!

アクセスは名古屋市営地下鉄名城線「堀田駅」徒歩3分。とても行きやすいです。ちなみに名古屋の地下鉄を使って観光するのであれば、運賃が一駅間でも210円とちょっとお高いので…「24時間乗車券」や「土日エコ切符」がお得!

入館料は無料!!企業博物館は本当にお安いところが多い…。そしてこちらも、無料で見ていいボリュームでは全くなかったです。平均的な所要時間60分。私は空いているときで映像資料もほぼ全て視聴したので90分くらいいました。

構成は大体以下の3ゾーン。

「ミシンゾーン」
「ヒストリーゾーン」全景撮ってなかったです
「プロダクトゾーン」

ミシンゾーンの前に、会社説明の映像を見ることができる部屋があるので、そちらを見てから回るのがおすすめ。全体的にベンチや椅子が多く設置されており、場所によっては自販機もあるので、無理なくまわることができます。

そう、それくらい!!密度が!!濃い!!

全然さらっと見ても楽しいんですが、所々に製品の音声案内や、体験コーナー(感染対策のため一部停止中)、歴史解説動画があり、全部見ていると本当に情報量が多く、満足感の高い展示でした。何で無料なん…???

次の章で、面白かったところをかいつまんでご紹介します。基本的に撮影OK、一部撮影禁止エリアはマークで表示されているのでご注意ください。

これはプロダクトゾーンにいる石原裕次郎さん。詳細は現地にて

3.展示紹介と面白かった所

①ミシンの壁

まずはミシンゾーンの壁面ミシン!

全部ミシン!!!世界各国のものが集められています

雑誌やテレビでこの映像を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際に見てきました!圧巻…!こちら手前のモニターですべてのミシンを拡大して見ることができます。素晴らしい。

②ミシンの成立

ミシンの原型は1790年イギリス。家具製造業者のトーマス・セントさんが特許を取得しており、これがミシンの最古の公式記録とされています。が、特許の分類ミス(たしか「衣料」とかにされてた)により全然注目されることなく80年近く日の目を見ることはありませんでした。そんなことある???トーマスくんに謝んなよ…。

資料をもとに復元された世界初のミシン!

その後なんやかんやで色んな発明家や仕立て屋さんが改良を加え、効率のため、庶民のため、ビジネスのため、徐々にミシンという製品が完成されていきます。

そんな中、自分達の職が奪われると危惧した縫製職人たちがミシンを壊したりと、現代にも通ずる問題も。その一方で、ミシンの普及により価格が安い既製服が普及(それまではお仕立てが一般的で、庶民たちは一枚の作業着を着倒すのが一般的)。庶民もおしゃれを楽しめるようになった、という部分は印象に残りました。

かつての常識を打ち破り、現金掛け値なしで庶民への呉服の普及を成し遂げた日本の三越にも通ずる所があるかもしれないなぁと勝手に感じました。

19世紀後半には、庶民も新品の服を買って流行を楽しめるように

③創業の精神

ブラザー創業の精神は次の3つ。

一、働きたい人に仕事をつくる
一、愉快な工場をつくる
一、輸入産業を輸出産業にする

高い志が感じられる良い精神ですね。飾らないシンプルさが素敵です。

④八十亀ちゃんコラボ

ブラザーさんとは関係ないんですが、私が行ったときは八十亀ちゃん(名古屋を舞台にし、名古屋の魅力を紹介する漫画、アニメ作品)とのコラボ企画をしており、館内の随所にあるQRコードを読み取ると、八十亀ちゃんの解説音声を聞くことができます。

ちょいちょい八十亀ちゃんによるコメントもあり、分かりやすく良いコラボだなと思いました。

入口すぐにパネルもありました。かわいい

⑤フォークリフト用クーラー

自動車メーカーも好きなので個人的に気になったのが、トヨタと共同開発した、フォークリフト用のスポットクーラーです。

年々暑くなる夏、フォークリフト操縦者の熱中症予防のため、フォークリフトそれぞれに取り付けるスポットクーラーの開発を、トヨタがブラザーさんに依頼したようです。クーラーも作れるのかブラザーさん…。

それまでは倉庫等の作業場所全体をクーラーで冷やしていましたが、屋外で長時間作業をする人もいますし、大きな作業場所全体にクーラーを効かせ続けるには電気もたくさん使用するし、脱炭素を目指すトヨタとしても望ましくないため、作業員が快適かつエコな手段として、フォークリフト用のクーラーの開発が候補に挙がったらしいです。

色々な賞も取っているみたいです。これは屋根に取り付けます

⑥戦争前後のもろもろ

あとまじで全然関係ないんですが、戦前戦後のかなり古い写真資料もふんだんに使われておりありがたかったんですが、戦後すぐと思われる時期の写真に「あんまき」のノボリの文字が。そのころからあんまきあったんだー!と驚きました。

また戦時中は多くのメーカーが軍用品を作る中、ブラザーさんは変わらずミシンは作っていたようです。家庭用ではなく工業用ミシンですが。軍服とかの製造工場で使われていたんでしょうかね?

4.おわりに

ということで、ここでは語りきれないくらいのたくさんの情報量と密度でした。過去のブラザー製品もたくさん並べられていますので、「なつかしい!」というものにも出会えるかもしれません。

これで無料か…という罪悪感の後、アンケートに回答すると「回答いただいた方にポストカードセット(セット!?)プレゼント!」というお土産までいただいてしまい、一銭も使わず見学を終え帰路につきました。どういうことだってばよ…。

関心や予備知識がある企業さんではなかったですが、一企業がどのような志を持って創業し、あゆみを進め現在に至ったかを知ることができ、たいへん魅力的なミュージアムでした。建物もトイレもめちゃくちゃ綺麗です!ちなみにこの建物、上から見るとミシンの形になっていると…こだわりも強い!

おしゃれな建物だな~と思っていたらこんな仕掛けが!

周辺はブラザーさんの病院や工場があるので、何かのついで、と寄る場所でもなさそうですが、地下鉄の便がいいので、何かの折にお時間ありましたら寄ってみてはいかがでしょうか。

ほんまそれ

以上、ここまでお読みいただきありがとうございました!