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ファミ箏のオンラインコンサート vol.2「天穂のサクナヒメ」裏話①

裏話というかオンラインコンサートなどでPAに乗せて和楽器の音を届ける際の技術的なことについてのメモみたいなお話などです。配信の映像面に関してはスタジオシンラさんにお任せしているもので、音周り中心のお話になってきます。思いの外長くなってしまったので何回かに分けてお送りします。

まずは8月15日にご視聴いただいた皆様、どうもありがとうございました!まだ観てない方はアーカイブを残しておりますのでぜひ観てくださいね!

https://youtu.be/aeSvozWTtcg

今回のコンサートは完全に「天穂のサクナヒメ」の楽曲オンリーなので、ゲームをまだやった事のない方はぜひゲームの方もチャレンジしてみてください!CEDEC AWARDS ゲームデザイン部門で『天穂のサクナヒメ』が最優秀賞を受賞!おめでとうございます!

https://www.marv.jp/special/game/sakuna/

さて、まずは放送開始直後のいわゆる待機画面ですね。夏らしい環境音を流しております。コレはゲームの方もいわゆる起動画面において環境音が鳴っているのでそれに則った形です。ゲームの方では起動画面はおそらく春でしたでしょうか、環境音に季節変化は無かったのですが、夏とか秋とか時間とか色々あったら素敵だなという自分の妄想を組み込んだものです。まあウチの近所で環境音を録ったのでややアブラゼミが多すぎて五月蝿いなというところはありますが…

そして開演前ムービーで太鼓の音というのもゲーム起動画面を意識したものですね。

サクナヒメの起動画面、自分はとても良いなと思っていて、ゲーム本編の方は音楽が鳴っているのに対して起動画面で環境音、サウンドスケープですね。音で風景、世界観そのものを想起させる下地を作っているのだなあと感じました。何処でも任意の音楽が聴ける環境かつ、何処でもどうしてもインダストリアルノイズが聴こえてしまう環境下の21世紀の現代に於いて自然環境音に身を委ねると言うのはいっそう表現の一つとして存在感を増しているように思います。オープンワールドのゲームなんかも環境音がかなり大事なのではないでしょうか。

本編に入っていきましょう。コンサート1曲目は「颪 ーおろしー」。この曲はやはり欠かせませんね…。作曲の大嶋啓之さんのブログからもその重要性について窺い知れます。

https://perfectvanity.at.webry.info/202011/article_sakuna07.html

邦楽のコンサートは礼に始まり礼に終わる舞台が基本にはなりますが、無観客オンラインコンサートなので初めの礼については省略、いきなり曲からドーンと始まる形にしました。編曲は田辺さん。今回に関しては元々、アレンジアルバムで7曲自分で編曲をしたので田辺さんの比率が少ないですが、ここぞの田辺!ですね。カメラ演出も考慮して編曲をするあたり流石です。

「颪」のみ、自分も独奏という形で演奏をしているのですが、マイクセッティングと音色の違いがこの曲で大きく感じられるかと思います。
「颪」のマイクセッティングがこんな感じになります。

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いくつか略して表記しておりますが、58はSM58、57はSM57というダイナミックマイクです。宅Sというのは卓上マイクスタンド、ブームSはブーム型マイクスタンドです。

1箏、2箏はそれぞれやや距離をとってのコンデンサーマイク、独奏がダイナミックマイク、それも箏下部のサウンドホールにオンマイク、近距離で設置しています。
独奏もコンデンサーマイクを使う選択肢もあってもいいのですが、あの位置だとマイクスタンドが絵面的には邪魔になるのと、自分が後で聴いた時にコンデンサーとダイナミックと違いがどれくらいになるかなと興味があったのであえてダイナミックマイクのオンマイクの音色にして違いを出そうかなという感じですね。コンデンサーマイクはその感度から箏に近すぎると自分はやや痛い音に聴こえるので適切な距離感で使いたい感じですね。

2曲めの「暴 ーあばれー」以降は自分が指揮者になり演奏はしなくなるのですが、マイクセッティングはこんな感じです。

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独奏の自分が居なくなっただけで同じ構成です。

その2曲めの「暴」ですが、三味線が大変目立つ曲ですね。放送中に気づいた方はおりますでしょうか、実は「暴」の三味線の音色がかなり大きいというか音色が立っていますね。
簡単に三味線について説明をいたしますと、三味線には大きく3種類あります。津軽三味線などで用いられる太棹、長唄で用いられる細棹、そして地歌箏曲、三曲合奏で用いられる中棹。ファミ箏は三曲合奏と言われるジャンルが基盤になっております。そのため中棹を用いています。棹の違いは音色にも当然影響するもので、箏の音とよく馴染むのが中棹だ、という感じですね。
その上で、「暴」においては中棹の三味線本体に平駒、平撥を使用しております。

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他の曲は鉛駒、津山撥という地歌箏曲、特に生田流における基本となる仕様です。

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中棹というハードにソフトとして駒と撥を選びサウンドを曲に合わせて変えているわけで、駒、撥でまたサウンドを変えられるのも三味線の魅力の一つですね。生田流箏曲では鉛駒、津山撥が基本ですが山田流箏曲になると曲によって平駒、平撥を使うという進化をしていたりしていて、そういう歴史的エッセンスが垣間見えるこの「暴」における駒、撥のチョイスでした。

また、「暴」はチャット欄で大嶋さんが書き込んだ通り、アルバムとアレンジを変えて3周目を作りました。2周目と3周目の間にちょっとしたインターバルを挟んでおります。三味線が2人に増えて負担が若干軽減出来たことと、オンラインコンサートの性質上、SNS等から後乗り視聴者も出てくるので尺を少しでも長くしたかった、というところですね。3周に増やすにあたり、もう一点気をつけたポイントがあります。それは、十七絃に休みを作ること。三味線は激しいのですが、自分の中で反撃のテーマと呼んでる部分で三味線は数小節休めるんですね。それに対し十七絃は常に弾きっぱなしになるので少しでも筋力を回復させる時間が必要でした。そういうインターバルタイムでもあります。そのインターバルに尺八3名に「怨」のイントロをモチーフにしたものを吹いてもらっています。

というわけでまずは裏話①はこの辺りで終了します。続きは次回をお待ちください!

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