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チャクラとサイケデリクス~MDMAと2CBの比較~

オルタード・デイメンション 第7・8合併号

チャクラとサイケデリクス~MDMAと2CBの比較~

おきひかる

【1】 チャクラとサイケデリクス

どのサイケデリクスが、どのチャクラに特異的に働きかけるのだろうか。
もちろん、サイケデリクスの効果は、服用量、セット、セッティングによって随分違う。しかし、上のような問いの立て方をすることは、まったく無意味ではないだろう。特定のチャクラに働きかける度合いの強いサイケデリクスというのは、事実、存在するように思える。
チャクラとは、古来インドのヨーガの伝統において、人間の背骨にそって存在する七つのエネルギーセンターと考えられているものである。これらのエネルギーセンターは、ふだん半分眠ったような状態になっている。だが、修行によって活性化すると、精神的な境地が前に進んだり、副産物として特殊な能力も目覚めるとされている。

チャクラ

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7つとは下からムーラダーラチャクラ(尾てい骨のあたり)、スワディスターナチャクラ(臍の少し下のあたり)、マニプラチャクラ(腹のあたり)、アナハタチャクラ(胸のあたり)、ヴィシュダチャクラ(喉のあたり)、アジナチャクラ(額のあたり)、サハスラーラチャクラ(頭頂のあたり)と呼ばれている。

ムーラダーラチャクラは、大地の根源的なエネルギーと繋がっている。
スワディスターナチャクラが目覚めると、物質的なエネルギーが、生命エネルギーシャクティとなって上昇しはじめる準備が整う。このチャクラはまた性エネルギーのチャクラでもある。
マニプラチャクラは感情的なエネルギーとの関係が深い。霊のようなものが、目覚めるのもこのチャクラの活性化によるとされる。ただし、私の考えでは、マニプラチャクラの目覚めによってもたらされるのは、シャーマニズムを脱魂型と憑依型に分類した場合の憑依型の変性意識の方である。憑依型のシャーマンには、このチャクラが活性化している人が多いと思われる。ある意味では通常の能力を超えた霊感を有しているが、感情や想念から自由になっていない場合も多い。
それが故にこの種のシャーマンは、互いに霊力を競い合うなどの権力争いに陥ることがある。
アナハタチャクラは普遍的な愛の目覚めに関係している。このチャクラは、下の三つのチャクラと上の三つのチャクラの結節点になっている。このチャクラが目覚めると、利己的な在り方から、利他的な在り方へと、その感性の変容が始まっていく。
ヴィシュダチャクラは表現性と深い関わりをもつ。さらには、生死を超えるチャクラであるともされる。このチャクラは、多くの修行者にとって最大の難関とされている。それはこのチャクラが完全に目覚めるとき、人は自他(生死)を超えた一如の世界に目覚めるからである。仏教で言うところの空に目覚めると言ってもいい。
アジナチャクラは、第三の目とも言われる。身体的な目の機能を超えたヴィジョンを見るチャクラである。このチャクラが目覚めたとき、スワディスターナチャクラやマニプラチャクラが、既に十分に浄化されていれば、感情や想念から自由なヴィジョンを観ることができる。それは深い瞑想となる。
仏教には「止観」(サンスクリット語でサマタ・ヴィパサナ)という言葉がある。「止」(サマタ)とは、ふたん我々を覆いつくしている感情や想念を止めることを指す。その上で一如の世界をありのままに観るのが「止観」である。「観」はサンスクリット語で「ヴィバサナ」と言う。呼吸を見つめ、自己を見つめる瞑想を指す。他のいくつかのチャクラも目覚めた上で、アジナチャクラも目覚めたとき、そのような「止観」が可能となる。だが、アジナだけが、先走って目覚めても、そのヴィジョンは、個人的な想念に覆われたものでしかないだろう。
サハスラーラチャクラが完全に目覚めると、人は解脱にいたるとされる。解脱とは生まれて生きて死んでいくこの世界のなかにおけるすべての業(力ルマ)を超えていくことである。クンダリ二ーヨーガでは人の尾てい骨のあたりにクンダリ二ーと呼ばれるエネルギーがとぐろを巻いて眠っているとされる。そしてこのクンダリ二ーを特別な修行こよって目覚めさせようとする。クンダリ二ーはひとたび目覚めると背骨に沿って上昇していき、この七つのエネルギーセンターであるチャクラを順次活性化していく(下から順に活性化するとは限らない。人によって活性化しやすいチャクラがあり、それはその人の個性とも言えるだろう)。
私もシッダ・ヨーガの経験から、クンダリ二ーの上昇や特定のチヤクラの活性化は体験してきた。が、同じような現象がサイケデリクスによってもたらされることもまた身をもって体験してきたと感じている。ヨーガの修行によって得られるチャクラの活性化と非常に似通った心身の変化がある種のサイケデリクスによってもたらされたと実感してきたのである。このことは非常に興味深い現象である。ある意味では、人間の意識を探求する上でーつのフロンティアとも言える気がする。
この論では私は特にMDMA(エクスタシー)によるアナハタチャクラの活性化についてと、2CBによるアジナチャクラの活性化について簡単に論じてみたい。
その上で私が過去にヴィシュダチャクラを自動的に開くサイケデリクスを見出し得なかったこと、およびそこから想定されるサイケデリクスの限界についても考究してみたいのである。
なおMDMAは1990年に日本で非合法化された。言うまでもないことだが、私のMDMAの体験は国内外のものを含めてすべてそれ以前のものである。その後その代替品として2CBが日本に上陸したが、この2CBも1998年に日本で非合法化されるにいたった。私の2CB体験はすべてそれ以前のものである。
現在ではすくなくとも国内では、これらのサイケデリクスを追体験することは難しい。また、たとえそのチャンスがあったとしても、法的な問題を無視することはけっして勧められない。
しかし読者は世界のどこかでこれらのサイケデリクスに出合うかもしれない。また歴史が動けば、これらのサイケデリクスを用いた意識の探求が合法的に再開されるかもしれない。私の論は長いスパンで見て人類の意識探求のデータのひとつとして有益なものとなることを目指すものである。

【2】 アナハタチャクラとMDMA

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