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よそ見をすることで避けることができるもの

人とすれ違う際、左にずれて避けようとしたら、相手も同じ方向にずれてきてぶつかりそうになる。反対方向に体を向けたら、同時に相手も動いて……というように、道端で見知らぬ他人とフェイントの掛け合いになることがよくあります。このような状況を回避する方法はあるのでしょうか?

私は相手を慮って衝突を回避しようとしており、相手も私と同じように考えている。互いに避ける気持ちで一杯の人類愛に溢れた人間です。このような理想的な協力関係にあるにも関わらず、衝突してしまうのです。いや、優しい人同士が協調しているからこそ、衝突問題が発生する。そう考えられます。

筋骨隆々のオラオラしているヤンキーを考えてみます。彼はどんな人が向かってきても、自分からは避ける気がなく、衝突することさえやぶさかではありません。アメフトのタックルよろしく相手に一直線に向かっていきます。傍若無人な振る舞いをしているワケですが、こういう場合、周りが率先して彼をよけるために衝突は起こりません。彼は一直線に動くことを決めきっているため彼を避けるのは簡単で、フェイント合戦も発生しません。ヤンキーは人と衝突しないし、フェイント合戦もしないのです。

ここで、ヤンキーと優しい人の違いが浮き彫りになりました。それは動きが予測可能かどうかという点です。ヤンキーは傍若無人ですが、動きが予測可能です。一方、優しい人というのは柔軟な対応をしようとするために、相手からすると動きが予測できないのです。したがって、優しい人同士が相対した場合、どう動けばいいのかわからないのです。純粋なジャンケンの様相を呈します。

私たちもヤンキーを見習ってオラつけばいいのでしょうか。筋トレでもすればいいのでしょうか。いや、それは危険度が高いです。例えヤンキーの真似事をしても、本物のヤンキーと相対した時、互いに譲らずに衝突してしまいます。そうなれば、疑似ヤンキーのこちら側に勝ち目はありません。

ヤンキーになる以外の方法を考える必要があります。相手に対して、「こいつは100%こう動く」ということを、明確に感じさせればよい。

解決策は、よそ見をして相手に向かっていくことです。

どちらかが避けねばならないような状況で、向こう側から人間があるいてきます。優しそうな見た目の青年です。こちらの出方を伺っています。こんな時、私は左側にそっぽを向いて、相手に向かっていきます。青年はどう思うでしょうか?

「こいつ、全く前を見ていない!僕が避けねば衝突は不可避。僕が、避けるしかない!」こう思考するに違いありません。

相手は私を避け、私はそのまま左を向いた状態で相手とすれ違う。相手は「なんて危険なヤツなんだ。僕が避けてやらねばぶつかっていたところだ」と思っているかもしれません。しかし、彼は私の戦略にまんまと乗せられていることにも気づいていません。

よそ見戦法にも問題点はあります。人間は基本的に前を向いて歩くことに慣れているため、よそ見をして歩いているとまっすぐ歩けないのです。そのため、よそ見をしながら歩くと、歩道を外れ、植えてある木にぶつかったり、最悪車に轢かれたりする可能性があります。

やはり、人類が皆ヤンキーになるしか道はないのでしょうか?