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心倫加再

広大な森林を有するイエローストーン国立公園では、小規模な森林火災が発生しても消火しないらしいです。初めて知った時には驚きましたが、理由を知っていたく納得しました。

森林火災は、木と木の感覚が広く、また落ち葉や枯れ木等が多いほど燃え広がりやすい。火災が発生しなければ、木の密度は高くなり、落ち葉等は地面に溜まっていきます。つまり、火災の燃料が溜まってくということです。火災の燃料が極めて豊富な状態の時に火災が発生すると、次々に火が燃え広がり、森林火災が大規模化して手がつけられなくなるのです。

しかし、適度に火災が発生して燃料を消費していれば、森林密度や枯れ葉が溜まりすぎる状況は防げます。大規模な森林火災に発展しません。だから、小規模な火災はあえて消火しないのです。

大災害を防ぐために、小災害は見過ごしておく。この手法は、応用できる場面が他にもありそうです。

バッタの大量発生はどうでしょうか。バッタの被害を防ぐために、徹底的にバッタ対策したとします。すると、次第にバッタの餌となる草木が溜まっていきます。そして、草木の密度が臨界状態に達した時、バッタの小家族が手がつけられない大群のバッタへと変貌を遂げます。ならば、草木の密度を下げるために、少々のバッタの発生は放置するのがよいのかもしれません。

人間の怒りにも応用できそうです。相手に激昂してしまう事態、または相手から激怒されるような事態を防ぐにはどうすればいいでしょうか。怒りを爆発させた時、それまでに積もり積もった不満が発散されることになります。燃料が尽きるまで、「前からずっと我慢していたんだけど……」という口上で、それまで我慢していた怒りのカケラたちが飛び出します。

対策としては、小さな不満を適度に燃焼させてやること。ちょっと不満を感じたことを我慢せずに言ってみる、相手に対して不満に思っていることはないか聞いてみるといった方法が有効でしょう。

適度に燃料を消費してやれば、怒りの大爆発は防げます。これで今日から柔和で平穏無事な毎日を、あなたも手にできるというもの。

まあ、実際のところ人間は森林とは全く異なります。ほとんどの人間は光合成もできず、せいぜい二メートル程度しか身長のない下等生物です。自ら酸素を作り出し、何十メートルにまで成長する植物のモデルを人間に当てはめるのはおこがましいかもしれません。