寒忙しいはどっかいけ
忙しさと寒さを何かと理由にしてしまいがちな、この冬の季節。
寒いから二度寝は許されて、忙しいからお部屋に誰も招かないから掃除も後回しで、寒くて忙しいから運動もどこか部屋の隅にでも置いておいてしまう。いつかちゃんとやろう、いつかまた始めよう。そう思っても時が容赦なく進んで行くだけで、気がつくとひと月ふた月経っているものだ。
でも体は正直で、ある時ふと動き出したくなる。動き出したくなるから、合図を出す。急にスポーツの動画をYouTubeで見だすし、それに感化されて運動靴を持ち出してくるし、どこにいっても体を目一杯にストレッチしてみたりする。そうしているうちに、ある日朝起きると、パチッと頭のどこかのスイッチが入って、体を動かし始める。
「あ、運動しよう」
スイッチが入るとそこからはスムーズである。テキパキとジャージに着替え、寒いので上着を着て、気がついたら冷たい朝の空気を全身に纏いながら、肺にもそれらを入れている。これがまた、気持ちいい。
あゝ、どうしてもっと早くに始めなかったんだろう。
この人生で何度その言葉を心の中でつぶやいたことか。
数えてしまうと失望しかしないので流石に数えはしないが、体は動き出す自分のかつての感覚を徐々に取り戻す。徐々に思い出させるために、僕は体をコントロールする。ひと月も動かさずにいた体だということを再認識しながら、無理をしないように動かす。心はいつでも”体を動かせる”という姿勢だが、実際はそうではない。そこのバランスにおいていつも心が体を先行してしまうから、運動会でお父さんたちは転んでしまう。
そう、20代を超えた体は、思ったほど若くもない。
怠ってきた日々の積み重ねを反省しながら、土曜の曇りの朝をかけていく。
***
帰ってくると、ちょうどいい倦怠感。大した距離ではない。4年前なら物足りなかったであろう距離を、気持ちは今も物足りなく思っている。でも、体は正直だ。ちゃんと疲れて、ちゃんと息が切れて、ほんと体は今まで重ねきたものでしかない。
ストレッチをしながら目を瞑り、体と周囲に耳を傾ける。心臓はどくどく。耳やこめかみの辺りでも心臓が付いているように、どくどく。鳥は朝からじゃれ合うように鳴いているし、風もなんとなく音を立てる。ストレッチで動く関節はまるで中古車のブレーキで、”ギギギ”でも”グググ”でもないような、何れにせよ濁音がついた音を立てる。どこかの扉だったら油を刺さなければいけない。
そんな、今まで僕が耳を傾けずにきてしまったものたち。
これがまた難しい。日々を生活していると、なんとも忘れてしまう彼ら。特に自分の体は忘れてしまって、今日は久々に会話をした感じがする。この体が自分の体であるということを、忘れていたようだ。
どうしてか、
”時間が勿体無い”
と思って、運動をせずにいてしまうのよね。
でも実際に運動をしてみると、どこか時間の流れが穏やかになる。
1分1秒が、濃くなる。
そんな感じの、まとまらない今日の文章。
”忙しい”と”寒い”を理由にしないのが、3月の目標である。
2020.2.29
おけいこさん
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