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拝啓 、

お元気ですか。最後に会ってから季節は変わり離れて過ごす2度目の夏、今年は猛暑が予想されておりますがお変わりなくお過ごしでしょうか。

こっちは梅雨に入り、出かけるときはいつも雨で気が参ってしまいます。思えば福島はよく晴れていた気がします、そして雨のあとにはよく虹がかかっていたような気もします。空が狭いこちらの生活で、かつてベランダから一緒に虹を見た日のような感動にはなかなか出会えないものです。

しかし新たな出会いも沢山ありました。出会いと別れの季節は春ではなく私にとっては夏で、まだまだ短い人生ですが転機というものは夏に訪れるような気がしてなりません。

去年の夏は知らない場所によく行きました。福島にいた頃は都会だと嫌煙していた関東ですが、目を凝らせば綺麗なところも沢山あります。6月には鎌倉に紫陽花を見に行き、江ノ島の海を見て。7月には埼玉県の長瀞で川下りをしました。新たな環境で慣れないこともありましたが充実した夏だったように思います。

さて、今年は例の感染症で暫くは遠出もできない状況です。若い感性のうちに色々な所へ行き沢山の風景や音や匂いを記憶しておきたいものですが、今年は叶いそうにありません。自分の脳みそがあとどれくらいで衰えて、周りの美しさを忘れてしまうのか、杞憂かもしれませんが不安でなりません。

自由が効くうちに、足や頭が動くうちに行ったことのない場所へまだ知らない景色に出会いたいものです。そして頭にこびりつけていつか思い出し、あなたに話して聞かせてあげたいのです。

あなたは海も山も嫌いですね、海は塩でベタつくから山は虫がいるから。しかし、夜の海の静けさとホタルのような街の光の温かさ、遠くから見る富士山の壮大さは本当に素晴らしかったのです。

あなたと二人で遠出した記憶はあまり無いのですが、これから作って行きたいなと思います。私があなたの元を離れても大切な人であることに変わりはないのです。これからは私が沢山綺麗な景色を見せてあげれたらいいなと思います。

末筆となりますが、ご自愛専一にお過ごしください。


令和2年 盛夏

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