少年兵のおやつ


 水の国、ここを訪れる者は、理不尽なまでの襲撃に遭い危険に晒されることになる。商人の運搬船などは積み荷の安全は保証されない。荒れ狂う海。命がけとなる寄港。その原因は、とある少年兵の存在にある。真面目な性格であるが故に、水の国への侵入者に対しては容赦しない。その決意を示すように海は波たち、大型船すらも揺らす。そして、時に沈めることも厭わない。
 
 セイレーン少年兵のリク。彼の特殊能力は、水の国の安全を優先するため、歌うことを運命づけている。
 リク「そーれ、これでどうかな〜🎶」
 シジカ「えーい、これでどうじゃ!」
 ・・・ポットン、バシャバシャ
 リク「ん?なにか落ちてきたぞ!あ、もうこの季節だったんだ!回収回収🎶」
 シジカ「お、波が収まったぞ。」
 リク「やぁ、タルト。もうこの季節になってたんだね。早速食べちゃうよ🎶うん、塩味最高!」
 アザミ「はじめまして。タルトはいませんが、曼珠商会の船です。通していただけませんか?あと、塩味は関係ありません。」
 リク「えー、タルトいないの?次に会ったら面白い話聞かせるって約束だったのに。残念。」
 シジカ「どんな話か知らんが、早く港に着けさせてくれ。波のせいで疲れてしまったぞ。」
 リク「あはは、ごめんごめん🎶 今回もいろんな食べ物かな?僕はこいつを頂いたから、今日はもう帰っておやつタイムにするよ!行って行って🎶」
 アザミ「ちなみにそれは、南柑20号というみかんですの。タルトからの贈り物ですわ。」
 リク「あ、そういう名前なんだ。分かった!タルトにお礼言っておいてね。ありがとう🎶」

 セイレーン少年兵はそう言うと、海の底へ潜って行った。彼の潜ったあとにみかんの皮が二つ分浮いてきた。
 アザミ「なんとか無事に通れましたね。タルトのおまじないには感謝しませんとね。」
 シジカ「おまじないというか、袖の下のようなものじゃったな。タルトの交友関係は謎だらけじゃ。」
 アザミ「あまり詮索するのはよろしくありませんわ。おかげで積み荷の無事が確約されましたし、さ、我らもタルトの想いを運びましょう。」
 万象森羅みかん「南柑20号」。水の国においても知名度は高く、持ち込んだ先から予約先に次々と運ばれ、タルトの想いは巡る。

 リク「せんせい。タルトのみかんが届いたよ!おすそ分け!今日のおやつは格別だね🎶」
 ???「ああ、このみかんは格別だ。タルト。また会いたいな。」
 タルトがつないだ想いは、みかんと共にこれからも人々の心に巡っていく。新たなつながりも創りつつ。

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