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【読書記録】人質の朗読会

タイトル:人質の朗読会
著者:小川洋子

遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた――紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは、人質たちと見張り役の犯人、そして……。人生のささやかな一場面が鮮やかに甦る。それは絶望ではなく、今日を生きるための物語。今はもういない人たちの声、誰の中にもある「物語」をそっとすくい上げて、しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。

Amazonより引用

以下感想です。
ネタバレに配慮はしていますが、心配な方は引き返してください。

タイトルと装丁に惹かれて手に取りました。
とある海外旅行のツアーに参加した日本人8名が現地の反政府ゲリラに襲撃・拉致され、人質生活の中で退屈な時間を紛らわすために各々が書いた話を朗読することになり、その内容が記されたお話です。
そのため構成としては短編集のようになっています。

大事件というわけではない。それでも本人の記憶に深く刻まれていたり、人格形成に大きな影響を与えたり…という出来事は誰にでもあることと思います。
そしてそれは存外他人には話す機会が無かったりするんですよね。

過去を懐かしむだけの思い出話とは少し違う、その人の人生のひとかけらを分け与えてもらったような気持ちになりました。
切なかったり、温かかったり、しみじみとさせられたり…小説なのに本当に誰かの朗読を聞いたような読後感でした。

ジェットコースターのような起承転結はありませんが、ここ最近読んだ本の中では一番好みでした。

小川洋子さんの作品を読むのは初めてだったのですが「博士の愛した数式」を書かれた方なのですね。
すごく有名で感動する話だよね?くらいの認識しかなかったのですが、俄然興味が湧いてきました。

作家買いしたいくらい気に入ったのは久しぶりで、なんだか二重に嬉しい。
小川さん作品読破してみたい…。

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