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映画初め


 「ケイコ目を澄ませて」「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」と戦う女性の映画が続いたので感想を2本まとめて。
 それぞれボクサーとジャーナリストと立場は違えど、試合や取材の過程だけでなく日常の描写がきちんとされていたのが印象的でした。
 まずは「ケイコ目を澄ませて」から。ほとんど笑わず相手の目をじっと見つめる、岸田ゆきのさんの可愛らしいイメージを覆すようなケイコの表情に惹きつけられました。ボクシングものではありつつも試合を過度にドラマティックに描くことはせず、ホテルの清掃の仕事、ジムへの行き帰りや朝のランニング、ほとんどノーメークなのにネイルは丁寧に塗るシーンなど日常の淡々とした積み重ねからケイコの心情がより伝わってきました。
 私が観た回はたまたま日本語字幕付きだったので「縄跳びが床に当たる音」「鋭いパンチの音」などの文字から耳の不自由な方は頭の中でイメージするのだろうなと考えながら観ることができました。手話を使うもの同士の会話が訳されなかったシーンがあったのは、ケイコにとっての日常を観客側が擬似体験できるようにしたのでしょう。16ミリで撮られた早朝や夜の荒川土手や工場の風景も美しかったです。

 次は#MeToo運動が世界的に広がるきっかけともなった、映画プロデューサーハーヴェイ・ワインスタインの何十年にもわたる性的暴行事件を告発した記者と女性たちを描いた「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」です。
 冒頭でキャリー・マリガン演じる記者トゥーイーがドナルド・トランプのセクハラを暴いたにも関わらず彼が当選してしまうというシーンで「ジャーナリズムは万能ではない」ことを提示しつつ、それでも声を上げなければ!という強いメッセージが感じられる作品でした。また被害女性を取材する過程で事件を知らないパートナーに本人の許可なく暴露してしまいそうになったり、正義のためとはいえ人をさらに傷つけてしまう危険性も描かれていたのがよかったです。
 実話ベースのフィクションという映画の中で突如現れるワインスタイン本人の肉声テープには背筋が凍り、被害女性たちの気持ちを思うと本当に胸が痛いと同時に怒りが込み上げました。実名で声をあげさらに映画にも本人役として出演しているアシュレイ・ジャッドはすごいけれど、名前を出さなかった人たちだって本当に悩んで苦しんだと思います。まだ事件は終わっていないし、彼女たちの苦しみは一生残るのだということを忘れてはいけないのです。今年は宗教団体内で実際に起こった性的暴行事件を描いたサラ・ポーリー監督「ウーマン・トーキング 私たちの選択」も公開されるのでそちらも観るつもりです。

 来週は雪が降るくらいの寒波がやってくるそうなので、皆様暖かくしてお過ごしください。最近愛用しているアームウォーマーは本当に暖かさが全然違うのでおすすめです。見出し画像はビヤンネートルのパティシエ監修によるローソンの「愛媛苺とレモンのプリン」。大好きないちごシーズン到来なので、隙あらば食べていきたい所存です。