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「コーダ あいのうた」「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

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 アカデミー賞ノミネート作品の感想2本まとめて。まずは「コーダ あいのうた」から。予告編を観たときは「あ〜感動系のやつね」ぐらいの印象しかなかったのですが、そんなやさぐれた私の心にも響く作品でした。

 家族の中で唯一の健聴者であるルビーが、大好きな「歌を歌うこと」を通じて恋をしたり進路に悩んだり。大切だけど時には厄介でもある家族に振り回されつつも少しずつ成長していく姿に笑って泣いて、聴覚障害のみに焦点を当てるのではなく王道の青春映画としても楽しめる仕上がり。ルビーのコンサートでの静寂の使い方や父親が娘の歌を理解しようとするシーンも効果的で、「サウンド・オブ・メタル」を彷彿とさせました。家族の生活音がうるさくてルビーが勉強できないエピソードにもハッとさせられたし、耳が聞こえない感覚を疑似体験しているよう。実際に耳の聞こえない俳優が演じたのも自然で良かったと思います。合唱のV先生も素敵でしたが、なんで合唱やボイトレの先生って「もっと!熱いパトスを見せてみなさいよ!」みたいなキャラになりがちなんでしょうね。(寡黙でも困るけど)

 上の靴下は映画とは直接関係ないけれど、音楽つながりということで。H&Mで買いました。

 次はNetflixで観たジェーン・カンピオン監督「パワー・オブ・ザ・ドッグ」です。実生活でも夫婦のキルスティン・ダンスト(ローズ)&ジェシー・プレモンス(ジョージ)とベネディクト・カンバーバッチ(フィル)のドロッとした三角関係の物語かと思いきや、「有害な男性性」をめぐるまさかのサスペンス的展開に。ローズの息子ピーターを事あるごとに「男らしくない」とネチネチいびるフィルの姿に最初はムカムカしますが、次第にその「過度な男性らしさ」の影にある本当の姿が明らかになっていき複雑な心境に。カウボーイとして生きながら実はイェール卒のインテリだったり、単純なマッチョ野郎として描かなかったところに監督らしさを感じました。

 「池で全裸泥パック」までするカンバーバッチさんも素晴らしかったのですが、ピーター役のコディ・スミット=マクフィーの圧倒的な存在感にも注目。やはり知性って大事ですね。今思い返すといろんな伏線がはられていたので、ぜひ注意深く御覧ください。見出し画像は英国人俳優カンバーバッチさんつながりということで、伊勢丹の「英国展」で買ったスワンアンドライオンのホットクロスバンズとキャンベルのショートブレッド。ホットクロスバンズはイースターに食べるパンで、ドライフルーツとシナモンやナツメグが入った素朴な味。ニュージーランドにホームステイした時に食べて感動したのですが、日本ではなかなか売っていないので出会えて嬉しい。軽くトーストしてバターをたっぷり塗ると最高。

 ぼやぼやしているとあっという間にアカデミー賞なので、「ドント・ルック・アップ」「ロスト・ドーター」「ベルファスト」「ナイトメア・アリー」あたりは観ておきたいところ。ウクライナ情勢はアカデミー賞なんて呑気なこと言ってられない緊迫した状況になってきていますが、募金などできることをやっていくしかないのかなと思っています。