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「TAR/ター」


 大好きなケイト・ブランシェット主演ということで心待ちにしていた「TAR/ター」の感想を。てっきり指揮者版「ブラック・スワン」みたいな感じかなと思っていたら、いきなりエンドロールが流れるオープニングにこれは普通の映画ではないなと身構えることに。

 前半はベルリンフィルを率いる女性指揮者ターの華麗なる経歴と考え方を提示するインタビュー、高級テーラーで仕立てられたシンプルで美しい洋服を着こなし楽団員はもちろん家族すら支配しようとする完璧主義者っぷり、複雑な人間関係、音楽院での講義シーンなどものすごい情報量でついていくのがやっと。でも、これが後半を理解するための重要なポイントになるので寝ないで!
 後半で数々のパワハラ、人種差別発言などがブーメランとなって返ってきてまぁそうなるよねとここまでは想定内だったのですが最後の最後に久しぶりに声が出そうになってしまいました。これは壮大なコントかホラーなのか、バッドエンドかそうでないのか。ターを盗撮していたのは誰か?など様々な謎が明らかにされないまま話が進んでいくので、鑑賞後に調べたり考えたりして理解することも多かったです。

 ターは完璧主義者である一方、差別はいけないと言いながら人を選別したり、恋愛感情や嫉妬など仕事に私情を持ち込んだり、些細な物音に怯えたり、強いようで弱い部分も抱えていて完全なる悪として描いていないところが良かったです。(パワハラはもちろんダメ絶対という前提で)決して裕福ではなさそうな実家に戻り、子供の頃憧れたバーンスタインの番組を見返すシーンは純粋な音楽への愛を取り戻したかのように見え、また彼女は這い上がっていくのだろうという予感がしました。
 一見古典的なようで、ジェンダーバイアス、パワハラの告発、SNSの炎上、芸術家とコンプライアンスなどまさに今問題となっていることが詰まっているとても現代的な作品でした。クラシックの知識があるとより理解できると思うので、そういう方と一緒に観るのもおすすめです。ケイト様のフィービー・ファイロ時代のセリーヌを思わせるシンプルかつマニッシュなファッションも必見。(黒のコートはThe Rowのものだそう。)「燃ゆる女の肖像」のノエミ・メルランが出ていたのも嬉しかったです。そしてウィッグをかぶると誰だか分からなくなるマーク・ストロングも。

 見出し画像は紫外線対策で買ったVTの下地とノーセバムパウダー。下地はくすみを飛ばしてくれるラベンダー色にしてみましたが、白浮きしたりせず使いやすいです。パウダーも一応UV効果のあるものに。化粧品などの日用品もなるべく定価では買わないようにしてますが、食料品だけでなく映画料金もサウナの値段も上がってきて地味に辛い。これで映画を観る人がまた減らないといいのですが。気温差が激しいので、皆様ご自愛くださいませ。