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「ザ・ホエール」


 ダーレン・アロノフスキー監督「ザ・ホエール」を観たので感想を。余命わずかな父親と娘が絆を取り戻すただの感動ストーリーではなく、「救済」とは何か?また正直に自分の気持ちを言葉にすることの大切さについて考えさせられる作品でした。
 劇中でもたびたび引用されるヘミングウェイ作「白鯨」に出てくる鯨のような巨体のチャーリー、そんな彼を見捨てられない友人のリズ、離れて暮らしていた思春期真っ只中の娘エリー、たまたま訪ねてきた宣教師など出てくるのは簡単に感情移入を許さないクセつよキャラばかり。それぞれ間違ったこともするけれど、それも人間。人が人を救うことなんてできないし、気安く「あなたを救いたい」などと近寄ってくる人間には狗巻先輩に「ぶっとべ」と言ってもらった方がいい。でもチャーリーの言うように、それでも誰かを気にせずにはいられないのもまた人間なのです。
 原作は戯曲なのでほとんど暗くて湿った部屋の中で話が展開しますが、いつ死ぬかも分からないチャーリーの様子と入れ替わり立ち替わり訪ねてくる人たちとの会話で緊張感が途切れずよりラストが際立つ演出が素晴らしかったです。「白鯨」のエッセイの使い方も効果的で、そうくるか!と唸ってしまいました。何かとAIが話題の昨今だからこそ、上手でなくてもいいから自分の思ったことを言葉にしてみるのはやはり大事なのだと思います。チャーリーの過食シーンなど観ていて辛い部分もあるけれど、ブレンダン・フレイザーはじめ皆演技も良かったのでぜひ劇場で。

 

 見出し画像は下北沢に移転したミーガンパティスリーのキャロットケーキ。レーズンやくるみがゴロゴロしていて美味しかったので、今度はクレープも食べてみたいです。
 黄砂が緊急来日したり気候が安定しなかったり人間も不調になりがちな季節ですが、おかゆ嬢が今年も胃腸の不調で病院へ。血液検査の結果は11歳にしては優秀!と言われるくらい良かったのですが、まだ調子が戻らないのでまた詳しく診てもらうことに。どうか大事に至らず早く良くなりますように。皆様もどうぞご自愛くださいませ。