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「リコリス・ピザ」「X エックス」

 たまたま70年代が舞台の映画が続いたので、まとめて感想を。まずは楽しみにしていたポール・トーマス・アンダーソン監督「リコリス・ピザ」から。私は同監督の「ブギーナイツ」で故フィリップ・シーモア・ホフマンの存在を知ってファンになったので、そんな彼の息子クーパーが出ているというだけでもう胸がいっぱい。演じたゲイリーの年齢15歳には見えないかもしれないけれど、子役としては厳しくなってきてビジネスを始めたりするちょっと生意気な役がピッタリ。そんな彼が70年代の音楽にのせて10歳年上のアラナと近づいたりすれ違ったりしながら疾走する姿は、最近の鬱々とした気分を吹き飛ばしてくれるようでした。と、同時に私はもうあんな気持ちで走ることはないだろうな・・・と羨ましくもあり。(足も遅いし)

 ただの恋愛映画ではなく、アラナの自分探しや実在のキテレツな人たちのエピソードもいいアクセント。アラナ・ハイムのことは知らなかったのですが、ミニの花柄ワンピースやタイトなTシャツにフレアデニムのファッションがとても似合っていて魅力的でした。最近はやや重めの作品が多かったPTAのイメージを覆す、「ブギーナイツ」や「パンチドランク・ラブ」を彷彿とさせる原点回帰とも言える作品でした。(ちなみにリコリス・ピザはアナログレコードのスラングだそうで、ピザ屋を経営する話ではないのでご注意を。)
 

 次はA24作品「X エックス」です。テキサスの農場にポルノを撮影しようと若者グループがやってくる。「悪魔のいけにえ」などに代表されるホラーの王道をなぞりながら、一味違うのはさすがA24。子供や老人など弱者とされている相手が実は最恐だったというのもよくありますが、殺人鬼老夫婦の妻のパールは老いて夫に肉体的に愛されなくなったことで苦しんでいるという「ホラーと老いと性」の描き方が斬新。若さと美しさばかりが求められるエンタメ業界への皮肉にも感じられ、ただのホラーにあらず。老いは誰にでも訪れるものだし、不思議と次第に殺人鬼老夫婦側に感情移入してしまっていました。
 グロいシーンはありつつも、笑えて爽快感もあるのでホラーはあまり観ないという方にもよかったら観て欲しいです。(エンドロール後に流れる予告編も必見なので、すぐ席を立たないように。)三部作だそうですが、面白かったので私は全部観ます!「サスペリア」に出ていた主演のミア・ゴスも、70年代風メークが似合っていて可愛かったのでそこにもご注目ください。(パールと一人二役やっているとは全然わからなかった・・・。)

 見出し画像はルルメリーの夏季限定のレモンサブレです。ちゃんと酸味が効いていて美味しいサブレでした。蒸し暑い日が続きますが、レモン味で少しでも爽やかに過ごしたいです。