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戦う女性は美しい


 映画の感想3本まとめて。まずは大好きなペドロ・アルモドヴァル監督「パラレル・マザーズ」から。赤ちゃんの取り違えをきっかけに起こる母親同士の愛憎入り混じった関係が描かれるのかと思いきや、そこはアルモドヴァルなので予想外の展開に。
 ペネロペ・クルス演じるジャニスのパソコンの壁紙が「殺された親族が埋められているはずの場所」であることにも象徴されるように、監督が描きたかったのはスペイン内戦は決して過去のものではないということ。事前に調べていくと分かりやすいと思いますが、スペイン内戦は兵士だけでなく一般市民にも波及し同じ民族、同じ地域に住む住民、そして家族までもが憎み殺し合うような事態を招いてしまったのです。ピカソの「ゲルニカ」やヘミングウェイの「武器よさらば」など多くの芸術家や小説家が作品を残していることからもその影響の大きさが伺えます。監督はジャニスに自分自身を重ね、赤ちゃんと殺された親族を元の場所に還すことで前に進ませようとしたのではないでしょうか。

 アルモドバル作品ではお馴染みのロッシ・デ・パルマの登場や、アナがさりげなくミュウミュウのジャージを着こなしていたのも良かったです。やはり映画監督は自身のルーツを辿る作品に行き着くのかな、と最近の巨匠たちの作品を観て思ったりしました。(スピルバーグやイニャリトゥの新作も未見だけどそんな感じ)

 次も同監督の短編「ヒューマン・ボイス」です。「パラレル・マザーズ」とは別上映で迷いましたが、あの氷の女王のようなティルダ様と情熱の塊のような監督の化学反応なんてやはり見逃すわけにはいかない。
 ジャン・コクトーの戯曲「人間の声」をベースに、ほとんどティルダ様の一人芝居で構成されたあまりにも贅沢で濃密な30分間で一片の悔いなし。冒頭の赤と黒のドレス、アグリーシューズと呼ばれたバレシンシアガの足指シューズ、真っ青なパンツスーツにシャネルのビッグトート、ライダースにスパンコールのパンツなどクルクルと変わるティルダ様にしか着こなせないハイブランドの数々に目が眩みました。インテリアもいちいちコマ送りしたいくらいのセンスの良さで、真っ赤な灯油のタンクまでお洒落・・・まさに目の保養とはこのこと。
 出ていってしまった主人を求めて家中を探し求める犬と、怒りや悲しみや動揺を悟られまいと振る舞う人間が対照的に描かれていて印象に残りました。原作とは異なる女性の強さを感じられるラストも良かったです。できれば2作品セットでご覧ください。

  最後はオリビア・ワイルド監督「ドント・ウォリー・ダーリン」です。俳優であり監督もこなすオリビアがハリー・スタイルズと交際したりフローレンス・ピューとの不仲説が流れたり色々ありつつも、前作のスクールコメディからガラッと路線を変え作り込んだ50年代風ユートピアは目を見張るものがありました。女性が声を上げると「自意識過剰では?」「頭がおかしい!」などと言われてしまったり、女性を一人の人間として見ていない男性の視点などフェミニズム要素が織り込まれていたのも良かったです。ディストピアものとしてのオチ自体はそんなに目新しくはないし詰め込みすぎてやや描き切れていなかった面もありますが、必死の形相で走りカーアクションまでこなすフローレンス・ピューが見られたので満足。

 自分自身と向き合い、困難や差別と戦う女性は強く美しいと思わせてくれる3本でした。見出し画像は「ドント・ウォーリー・ダーリン」を観たときに予告で流れた「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」のポスター。猫好きとして観なければ!と楽しみにしています。