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ドクターデスの遺産 -BLACK FILE-

「あの先生が・・・救ってくれたんです。」

原作は、中山七里のミステリー小説。

雨の降る中、少年はあるところに電話をかけていました。
警察です。
「もしもし?事件ですか?事故ですか?」
「あの・・・」
「また君?お母さんは?」
『悪いお医者さんが来てお父さんを殺しちゃった・・・』

当初は、いたずら電話かと思いましたが様子がおかしい。
少年からの通報で、二人の刑事が少年の家を訪ねる事にしました。
何度も呼び鈴を鳴らしますが、誰も出てきません。
強引に開けようとする、犬養隼人(綾野剛)。それを止める高千穂明日香(北川景子)。
そこに下に住んでいると思わしき女性から声をかけられます。
「実は・・・」

場所は変わって、葬儀場。
少年の名前は大地。そして、父である馬込健一の葬儀が行われていました。
健一は、長く肺がんを患っており結局は心不全で亡くなったとの事でした。

一見、不審な点が無いように思われていたがいつもの主治医が最期を看取る前に別の医師と看護師が家に来ていた事が分かります。
このことから、犬飼刑事は急遽遺体を遺体が燃やされる前に調べる事になりました。
それに反対したのは、大地の母親でした。
「どうして?!警察の人がこんな所に…。」

話したのは、大地でした。
「お父さんとは約束をしたんだ。早く元気になって野球しようねって」
鑑定処分許可証を取って、健一の遺体を司法解剖することになりました。
その結果・・・。

健一の遺体からは、血液中のカリウム濃度が異常な高値を示していることが判明します。
そして、母親に何故その日いつもとは違う医師が来ていたことを隠していたのか…。
母親は言います。
健一が病気になってからは、つらい看病、働いても維持費の為に無くなっていくお金、殺してくれなど毎日のように言われる心ない言葉…。
自分が一生懸命面倒を見ていても、健一は死にたいと言っていたと。
そこで・・・。先生に出会ったと。
「あの先生が救ってくださったんです。心も体もボロボロの私には、こうするしか無かったんです…。」
それでも、人を殺していい理由にはなりません。
この時点で、何かもっと別の方法があったのではないかと思いましたが…
きっといざ自分がその立場になったら、そんな余裕は無いのかと思いました。

先生とは。
過去にドクターデス(死の医師)と呼ばれ、積極的に患者に安楽死を推奨した病理学者のジャック・ケヴォーキアンの異名です。
ジャックは末期病患者の積極的安楽死の肯定者で、自作の自殺装置を使った自殺幇助活動にちなんで「死の医師(ドクター・デス、Dr. Death)」と呼ばれ、知られるようになりました。
この時点でジャックは殺人罪で投獄されますが、仮釈放の後も亡くなるまで
安楽死・尊厳死の啓発活動を続けていました。

健一に薬を打ったその医者は、自分をドクター・デスと名乗りドクター・デスの往診室という闇のサイトを立ち上げ 患者の同意の元 特殊な薬を打ち、安楽死をさせるものでした。
報酬は貰っていませんでした。

スイスやオランダ・ベルギーなどでは、ある一定の条件下の元安楽死は合法とする国もありますが、もちろん日本では違法です。

同じように健一にチオペンタールの点滴を打ち、塩化カリウム製剤を打ち安楽死を行った医師がいることが分かります。

闇サイトにはこう書いてありました。

人には生きる権利と死ぬ権利が平等にあります。

死にたいあなたへ。最期は楽に…殺して差し上げます。
報酬は、頂きません。

こんなことを書かれているサイトを、病気の人が見たり介護をしている人達が見たらどう思うでしょうか・・・?
きっとこのサイトに行き着いたら、藁にも縋る思いで話をしてしまうでしょう。

このサイトにたどり着くまでに、何件もの安楽死事件が起こっていることが分かります。
しかも事件が発覚したのは、小学生の少年からの通報があったからです。
もし、あのまま・・・火葬場にて遺体が燃やされていたら。
この事件は、表に出る事は永遠になくなり被害者達だけが増えていくところでした。

ではここで問います。

被害者とは誰なのか?ドクターデスは患者の許可を貰い安楽死を行っただけです。
家族も苦しまずに死ねるなら…と積極的にお願いしてしまうかも知れません。
ですが、ここでもう一度云います。

日本では、安楽死はありません。れっきとした殺人です。
この事件を筆頭に、次々と同じ被害者が浮かびあがってきます。
でも、事情を聞くと皆…ドクター・デスに感謝を伝える人たちばかりでした…。
犬飼も、腎不全で入院生活を強いられている娘がいます。
もし、ドクターデスのサイトを事件ではなく保護者として…見てしまった場合。
その誘惑には勝てないかもしれません。。

この映画を見た時、自分の親が大病をしていつか介護をすることになった時…果たして自分に出来るのだろうか…
貯蓄など、自分の大好きな人が苦しみもがき…死にたいと云われたら…そう考えてしまうと、心が真っ黒になりそうです…
でもいつかは来る介護。避けて通れない道です。
でも、もし…。
これ以上考えると、心が締め付けられて涙が出そうになっちゃいます…

命の重さ…を考えさせられる映画です。
でも、映画にするには少し重すぎるお話な気がします。
ひとつのきっかけとして、観てみるのも良いかもしれません。








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