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#16 放射線科でオリジナルマスクを作る

先「ではこの後放射線治療の詳しい説明を放射線科で受けて下さい。」

ガン宣告を受けてすぐ忙しく放射線科に向かった。

B1にある放射線科は重たそうな壁に囲まれた極秘の基地のようで少し近寄り難い雰囲気があった。
待合室はなく廊下の壁沿いに何脚かソファが並べられていた。そこにちょこんと座る二人。

先「岡安さーん」

診察室には少しベテラン感のある先生が待っていた。

先「初めまして。実は岡安さん担当の先生が本日休みなので代わりに私から説明させてもらいます」

え?
もう岡安担当の放射線の先生がいらっしゃるんだと思いながら説明を受けた。

どのように放射線を当てるのか。
治療中の首の周りはどう変化していくか。
副作用にはすぐに出る物と遅れて出てくる物がある。
照射は土・日はお休み。
喉元の痛み、唾液の分泌量低下、食欲不振など細かく教えてもらった。

すると突然ゆうちゃん。

ゆ「髪の毛ってどうなんですか?」


えっ?おいおい、いきなり何聞いてんだよと
ゆうちゃんに目をやると、少し含み笑いで質問をしていた


先「はい、岡安さんが使う抗がん剤は特に脱毛の副作用はあまり出ませんが、
放射線は当てる角度によっては脱毛が起こるかもです。予想では右襟足付近に影響が出るかもですね…」


右襟足が脱毛する可能性?なんだってー!?
たださえ薄毛になっているのに…


ゆ「可能性あるんですね…元々ハゲちゃってる所はどうなります?」 


えっ?何を更に聞いてんだよ?


先「ん・・・と・・・そうですね・・・
逆に生えてくるってこともないですね」


答えなくていいよ!先生!
放射線治療で発毛なんて期待しませんよ!
聞いたことないし…

なんかここに来てちょこちょこ余裕が出てきている?
この前まで家で泣いてた夫婦はどこにもいなかった。
明るいなら…まいっか。ハゲはやだけど…


先「説明は以上です。この後、治療用のマスクを作りますのでもう少々お時間かかります」

岡「マスク?ですか?」

先「はい、放射線をガンに正確に照射するためにしっかりと固定する岡安さん専用のマスクになります。オリジナルマスクですね」

ゆ「えー良いな。私もオリジナルマスク作りたい」

あはははははと先生は苦笑い。

ゆうちゃん…きっと思ってるマスクと違う。

画像1
ゆうちゃんマスク想像図


こんなんじゃないだろ、絶対!!!


先生に例えばのマスクを見せてもらった。

イメージは映画「犬神家の一族」に登場するスケキヨの不気味さとラバー感を削り、少し硬くした感じ。目のところは完全に塞がっていて、顔から胸辺りまで覆われるが鼻の頭の部分だけは呼吸のために出ていた。

診察室から斜向かいの部屋に移動し、
技師の先生に誘導されてベッドに横になり
顔に暖かい白い包帯のようなメッシュ地の布で
覆い少しの間静止。


その布が徐々に固まって、あっという間に岡安専用マスクが出来上がる。

そのあと部屋が少し暗くなり、機械からレーザーの様なものが横になっている体を照らし出した。


出来上がったばかりのマスクと体とレーザーの位置を改めて見ていると思われる。


治療用のガイドを作っているのだろうか。
すごく繊細で丁寧な調整に感心していた。


技「はい、では体に印をつけていきますね。ペンが少し冷たいですよー。大丈夫ですか?」

岡「はい、大丈夫です」


と、技師の先生は油性マジックと思われるペンで体に印をつけていった。これもガイドなのか?

技「はい、オッケーです。お疲れ様でした。今つけた印は治療のために必要なのでなるべく落とさない様にお風呂など入ってください。」

えっ?
色々丁寧な調整だったが一番最後に
自分の体の洗い方に委ねられちゃった感じ…マジック…消えちゃうんじゃないかな…
なるべく洗わない様に過ごそう…

放射線科での一連の工程は終わり、再び主治医の先生の所に戻った。

                     つづく

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