見出し画像

不確定日記(はじめての胃カメラ)

 どうせ朝食は食べられないし、化粧もしなかったので朝は余裕があった。出勤の人たちに混じって歩く。店舗のシャッターを開けている人をみると、わたしも街の一員になった気がする。

 検診センターの受付は薄暗くてきれいだった。
ここの採血の人はものすごく上手なので安心感がある。血圧は高めなので、力を抜いたら少しでも下がるのではないかという希望のために血圧計に書いてある機種の愛称らしい「健太郎」という文字を見ていた。エコーや心電図は毎年のことで慣れている。身長は去年より1cm伸びていた。

 口から入れる胃カメラは思ったより苦しくない、いう暗示を自分にかけていたが、思ったとおり苦しかった。途中から呼吸の感じをつかんだ気がして、もう一度やったらもう少し余裕が持てるかもしれない、という気もするが、次は経鼻を選ぶと思う。明るい看護師さんがめちゃくちゃ励ましてくれたので、「辛かった」と言うのも悪い気がして帰り際に「面白かったです」と言ったら「たまにそういう人いるんですよね」だそうだ。自分の体内を見て興味深かったのも本心だ。思ったよりきれいなものだった。


涙と鼻水と涎を思うさま出したあとなので、そのあとの婦人科とマンモグラフィ検査は「どうとでもしてくれ」という諦めによってスムーズに進んだ。持って行った文庫本は読む時間がなかった。

 外に出たら外は春で、おいしいものでも食べて帰ろうかとも思うが、まだ胃カメラの麻酔シロップ(とてもまずい)の味が舌先に残っている気がして、しかし空腹ではあり、とりあえずうどんを食べ、帰りがけに近所で桜餅を買った。帰ると、玄関に飾っている桜の枝についた蕾がだいぶ開いていた。桜餅は生地の部分がちゃんともっちりしていて、桜の葉は、しっかりしょっぱくて、とてもおいしかった。

 

そんな奇特な