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「付き合ってはいけない男」と結婚した①

「友達からワンクールで彼女を変える男って言われてた」

付き合う前の雑談で、彼氏が言っていた。
この彼氏とは後に結婚するので、以後、夫と書く。

夫と付き合い始めた経緯などは、「20代で2回結婚した話」にて。


ワンクールというのは、アニメやドラマが始まって終わる期間のことで、大体3ヶ月くらい。交際期間にしては短い。

「好きじゃなくても好きになるかもしれないから、とりあえず付き合ったりする。それでダメだったとしても、それはそれ」

夫の恋愛観をどう思うかは、個人の価値観によるところが大きいけど、1人の人と長く付き合っていた私には新鮮だった。

夫は私よりも3歳年下で、付き合い始めた当時はIT企業の契約社員だった。

調理師免許を持っているので、元々は料理人として働いていた。運良くコロナ前に異業種に転職していたので、コロナショックの影響を受けずに済んだらしい。

料理人時代は、地元の関西では正社員として働いていたけど、関東に出てきてからはアルバイトとしていくつもの飲食店を掛け持ちしていた。

もちろん出会いも多いので、いろんなタイプの女性と付き合っていたらしい。
夫は、これといった女性のタイプがない。
「可愛くないなぁと思っても、付き合ったら可愛いと思うようになるかもしれん」
理解できない方向のポジティブさだ。

夫は駅近のワンルームアパートに一人暮らししていたので、友達の溜まり場になっていた。男女グループで宅飲みしてそのまま雑魚寝したこともあったそうだ。
その当時付き合っていた彼女に、女友達の忘れ物のマスカラで浮気を疑われたこともあったらしい。

その時は無実だったけど、夫は今までに浮気したこともあった。
どうして浮気をしたのか、私が浮気されたわけじゃないけど、夫に聞いてみた。

「今の子が絶対と思ってなくて、そんなに気持ちがなかったり。浮気をして自分の気持ちがどう変わるのか、興味もあった」

個人的にはなかなか身勝手だなぁと思うけど、若いうちは色んなことに興味があるのも確かだよなぁとも思った。

こういった話を事前に聞いていて、付き合おうと思った私もなかなかどうかしている。
今だから言えるけど「私も浮気されるんだろうな」と思って付き合い始めた。

そんな予想はいい方向で裏切られて、夫は一度の浮気どころか、親にも友達にも「いい旦那さんだね」って言われるほどの夫になった。

私と夫は、同棲するまでに2回しか会わなかった。
一度目は福岡旅行、二度目は夫の自宅だった。

福岡は、私の地元で、夫にとっては初めて訪れる場所だった。
福岡空港で初めて会った時、電話とちょっと声が違ったのに緊張した。ビデオ通話はしたことがあったけど、メガネをかけていない夫は少しだけ幼く見えて、まつ毛が長くて可愛らしい顔をしていた。

初めて一緒に食事をしたのは、天神のドトールだった。私は飲み物だけ注文したけど、お腹が空いている夫が両手でサンドイッチを持って頬張る姿が可愛かった。
個人的な価値観だけど、食事の姿が好ましい人とは相性がいい気がする。

旅行中は照明が暗すぎる天神のビジネスホテルに滞在した。夫は私のために、苺をチョコでコーディングした苺タブレットを作ってきてくれていたので、ホテルで一緒に食べた。
夜は明太子やもつ鍋など観光名物を楽しんだ。

外は雨が降っていて、屋内に入る時に傘を上手く畳めない夫の姿が印象的だった。
私のそれまでのイメージで、夫は都会出身で料理上手で器用なオシャレな男性と思っていたけど、実際は手先は不器用であどけない感じがした。

2泊3日の旅行はとても楽しくて、離れるのが名残惜しかった。

出会いから約一月後、今度は私が夫の住む関東を訪れた。
夫の自宅は、先述した通り、駅近のワンルームアパートだった。ゲーミングモニターとガチャポンのフィギュアたちが雪化粧のように埃を被っており、たくさんのぬいぐるみたちが、焦げ跡のついたくしゃくしゃのラグの上に居心地悪そうに置かれていた。
要するに、汚い。

頼みの綱の掃除機はずっと使用されておらず、まさかの故障していた。
でもこちらは良くも悪くも無敵の躁状態。
2泊3日の滞在中に洗濯、掃除、整理整頓をして、夫の自宅は結構綺麗になった。

私が夫の好きなところのひとつに、自分自身にはケチだけど、必要な物には気前よくお金を使ってくれるところがある。
夫は掃除機から整理整頓に使う収納まで、何一つ口出しせずに、私の好きな物を買ってくれた。

夫は元プロだというだけあって、料理がとても上手い。得意のクリームパスタを作ってくれて、それがとても美味しかった。

さすが恋愛経験が豊富なだけあって、女性の扱いが上手い。優しくてこちらの話を一生懸命聞いてくれて、料理上手で、ちょっと抜けているところが可愛らしい。夫がモテる理由がわかった。

夫と過ごす時間は楽しくてあっという間だった。

2月も終わり頃の寒い日、私が夫の自宅に転がり込む形で、同棲が始まった。

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