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日銀:マイナス金利政策の解除とは

日本銀行(日銀)が、近く開かれる金融政策決定会合で「マイナス金利政策の解除」を決める見通しであるという報道があり、話題になっています。

以前の記事では、経済政策の検討素材として通貨発行を例に考慮しましたが、この度のマイナス金利政策の解除は、通貨を追加発行し市場へ投入するのではなく、「社会の仕組みに変更を加えることで、経済活動の正常化と健全な成長を目指す政策」と考えられています。

マイナス金利政策とは

マイナス金利政策とは、簡単に言うと、銀行が中央銀行(日本銀行)にお金を預ける際に利息を支払わなければならない、つまりお金を預けることにコストがかかる状態を作り出す政策です。これは、銀行がお金をただ預けておくよりも、貸し出しや投資などで積極的にお金を動かすことを促すために導入された政策です。

金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入
日本銀行 2016年1月29日

例)家の中に「家計の貯金箱」がありますが、その貯金箱には、その中にお金を入れておくと、時間が経つにつれてその金額が少し減ってしまうという運用ルール(マイナス金利政策)があります。つまり、貯金箱にお金を入れておくと、その保管のために少しずつお金を失うことになるという訳です。その目的は、家計のお金を動かして、より多くの活動や投資を促すことにありました。この状況下において、家族には、貯金箱にお金をただ入れておくだけではなく、それを使って何かを購入したり、投資したりすることの検討が求められました。

マイナス金利政策の解除とは

マイナス金利政策の解除とは、先程の例でいうところの「家計の貯金箱」に適用されていた運用ルール(マイナス金利政策)が変更され、お金を入れておくことで減少しない、もしくは、少しでも増える可能性がある方針へ変更することを意味しています。具体的には、日本銀行が金融機関に対して適用していたマイナス金利の方針を撤回し、お金を預けることによるペナルティーがなくなり、逆に利息が得られるようになる可能性が生じます。これにより、銀行は自らの資金を日本銀行に預けることにより、資金を失わず、ある程度の金利を得られるようになる可能性があります。

政策の解除の意義

この政策の解除は、経済全体におけるお金の流れを健全なサイクルに整えることを目的としています。マイナス金利政策が、銀行や社会に貸し出し(預入以外の運用)を促していた環境から、本来の金利のある仕組みを適用とすることで、貯蓄の選択肢を与え、同時に健全な貸し出しとのバランスを取ることを目指します。

例)これからは、貯金箱にお金を入れても、時間の経過で金額が減ることはなくなります。これにより、家族は以前より安心してお金を貯金箱に入れておくことができるようになります。貯金をすることのペナルティがなくなったので、家族はお金を使うか貯めるかを、より自由に選択できるようになります。
結果として「市場の自由な動きに基づく経済活動の促進が期待される」という訳です。

日々の生活への影響

住宅ローンや個人・企業の融資コストの上昇

マイナス金利政策の解除後は、金融機関が短期金利に連動する変動型の住宅ローンや企業の借り入れ金利を上げる可能性があります。これは、新規住宅の購入を検討する人や、資金を必要とする企業に影響を与えます。短期的には、借り入れコストの増加が見込まれます。

貯蓄に対する利息率の改善

貯蓄や定期預金に対する利息率が改善する可能性があります。これは、特に金融資産を多く持つ世代や、安定した資産管理に際し、預金利息を重視する人にとっては、プラスの影響をもたらすかもしれません。

円の価値への影響

金融政策の変更は、通貨の価値にも影響を及ぼす場合あります。金利の上昇は一般的に、外国からの投資を引き寄せることで通貨の価値を強化する傾向があり、円の価値が上昇する可能性があります。これは、輸入商品の価格を下げる効果がある一方で、日本の輸出業者にとっては競争力の低下を意味する可能性もあります。

市場心理と経済の見通し

日銀がマイナス金利政策の解除を決定した背景には、賃金と物価が上昇しているとの認識があります。賃金と物価の上昇が適切に働き、市場心理(投資家や私たち)の日本経済に対する信頼感を高めることができれば、それが消費による経済の活性化にも寄与すると期待されています。

結論

マイナス金利政策の解除は、短期的には個人や企業の借入コストの上昇をもたらすかもしれませんが、長期的には経済の正常化と成長を促す一因となる可能性があります。但し、この政策の転換がどのように具体的な影響を及ぼすかは、今後の経済状況やその他の政策措置によっても左右されるため、私たちは、その動向を注意深く見守る必要があります。

マイナス金利政策の解除が消費の活性化につながると考えられるのは、この判断による金利の上昇が、企業の投資意欲を高め、賃金の上昇を促し、結果として消費者の財布の紐が緩むことにあります。この一連の流れが、経済の好循環を生み出し、消費の活性化に寄与すると期待されている訳です。

私個人としては。この度の政策変更が、インバウンド観光の大幅な促進という形で、経済の活性化につながることを期待します。日本はそもそも、国内外の観光客を引きつける魅力的な目的地を複数備えた国です。そこに、この度の経済正常化に向けた一歩が、安定した経済環境での旅行体験とのアプローチになり、物価上昇への耐性を保ちながら進められると良いなと考えます。

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