2.16

少年検閲官という本が残っていたので読んだ。以前読んだことがあると思っていたのだが、まるで記憶がなかった。読んでいなかったのかもしれない。
序章はファンタジー風にはじまる。叙情的な文章、自然と感情の描写。世界は抽象風味で、セリフが多い。少女と少年、悲劇の物語。申し分ない。
振り返ると死体を残して家が消えている。盲目の少女が存在しないはずの壁に当たる。さまざまな謎を残して序章は終わる。壁にマークが書かれた家。幽霊。少年が拾ってきた少女。本編でも様々な謎が興味を引く。
世界観が独特だ。犯罪抑止のため(当初は)、書物が禁止された世界。とくにミステリが厳しく封じられている。人々は犯罪というものが認識できなくなっている。不可解な死は不思議な自然死だと思われてしまう。
検閲官は書物を燃やす役人だが、少年検閲官は「ミステリ」の調査と処分に特化している。しかし少年検閲官にまつわる、中盤で明かされる世界の設定は、メフィスト的だ。新本格のガラパゴス的でもある。ファンタジーでエモーショナルな小話と、新本格ガラパゴスの取り合わせがくせになる、北山猛邦はずっとそういう作家だ。
様々な謎があるが、いちばんすぐれているのは、少年が少女を腐らせてしまった話だ。納得感がもっとも高い。
引き続きオルゴーリェンヌも読む。ほんらいはオルゴーリェンヌも読んでから書くつもりだったが、長かったのでまにあわなかった。400ページくらいは読んだのだけれど。オルゴーリェンヌのほうは確実に、過去、読んだ。しかしほとんど忘れている。そういうふうに本格ミステリは失われていく。


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