へい!

いまだに思い出すと「あー」と声が出てしまう。

田舎の高校生時代、友達と焼肉なんていうのはイベント中のイベントで、制服か部活着しか見たことのない友達が私服姿で集まると言うのも楽しみの一つだった。
交通機関も発達していないので親の運転する車で集合する。車から降りてくる友達を見てお互い駐車場で駆け寄った。
私を含め3人の女子高生で集まり、焼肉屋の入り口前で非日常に浮かれて話をしていると、私服の話題になった。

「おかたちの服、なにそれ」

ふふふっと貶める意思なくただただおもしろそうに片方の友人が笑う。
もう1人も私の服を見て楽しそうに笑った。

その時の私は焼肉で汚れないようにして、気合が入りすぎてもカッコ悪い、でもダサいと思われないようにその時の私の中で一番可愛いパーカーを着ていた。
グレー地に緑の線で二本足で立ったクマが「greeting HEY!」とひょうきんな顔で片手を挙げているパーカーだ。(しかもリバーシブルで裏地は緑だった)

私はこの服がかわいいと思い、家族で出かけたイオンで母に頼み込んで買ってもらったものだった。
出かける前はあんなにも心強く味方だったクマが情けなく見える。少し視界が歪んだ。
うまく笑えているかわからなかったが、私もその場は顔を真っ赤にしながら笑っていた。(私は今でも嘘が下手なので、その時もきっと無理して笑っていたのはバレていただろうと今なら思う)

私の顔のタイプや骨格に合う服装を最近まで知らなかったのだから、この恥ずかしい体験の延長のような出来事は長い間続いていたのだろう。
この時に面と向かって笑われた事は全く成長にはつながらなかったが今はマシだと思える。
可愛らしいキャラクターの服は私の顔には似合わなかった。

もうその時友達がどんな服を着ていたかも、その後の焼肉の味も、帰って泣いたのかも覚えていないが、思い出すと口の中に苦い味がする。

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