境界線がなくなる時

金魚の健康には青水が良いとのことで、たまに青水擬きの藻をあげると、美味しいそうにパクパク食べる。きっと「ごはんですよ」のような、いぃ匂いがしているんだろう。
水槽には、金魚が消化不良になると透明なヒラヒラがふわりと浮く。藻を食べた翌日は、深緑の塊が沈んでいる。それをほくそ笑みながらスポイトで吸う。

(青水擬きの)藻の舞う鉢に、泳ぐ金魚を眺めていると、金魚の健康を願う気持ちと、自己満足の、とても良い事をしたような気分になれる。

そして私もモワモワとした透明な黄緑の液体を飲んでいる事に気付く。とてもいぃ匂いだ。完璧な自己満足の液体。きっとカテキンやポリフェノールは健康を促進しているだろう。少なくとも精神衛生は充分に保たれる。

ドジョウのドジョコも(藻を)召し上がりませんか?とお誘いするけれど、「また金魚を騒がしくさせたわね」という感じで興味無さそうだ。

そもそも「ドジョウを飼いたいな」と、思ったのは、毎日の金魚の水換えに疲れていた時、金魚飼いの友人がドジョウも飼っていて、「可愛いし、食べ残しとか掃除してくれるよ。」の一言がとても魅力的だったのだ。その後、色々調べた結果、残飯ばかりじゃ病気になるし、過密飼育になると、やはり水の汚れ問題は解決しないので、それは解決策では無くなった。

そしてその夏、ついにヨレヨレだった一匹の要介護金魚の最期の日が来てしまった。

季節が過ぎ、その冬のある日、釣りが趣味の友人夫婦から「太刀魚釣りのエサ用のドジョウの最後の一匹、釣りエサにしては大きいから要る?」と連絡があった。直ぐに自転車で持って来てくれた。
思っていたより大きく、力強かった。
クルクルと小さな瞳を動かしていた。
睡蓮鉢に入れたら、このコミカルな横顔は見れなくなるなと思いながら、金魚のいる睡蓮鉢へ引っ越した。

そして、横顔はおろか、砂利や石の下に潜ってしまい、冬の間の2か月ほどは、一日一回姿を拝めたら良い方だった。。。

そして、よく考えたら、うちの金魚が食べ残すコトなんて無かった。。。
なんでも吸い込むように食べる金魚の下で、姿を現さないドジョウのドジョコに、ゴハンを食べてもらう方法を色々試してみた。

春が来て、ドジョコも慣れたのかシュ〜と泳いでみたり、石の下から頭だけ出してこちらを見てたり、鉢のへりにお腹を沿わせてクルリンと一周泳いでみたり、その時はコミカルな横顔も拝める。

そして、掃除屋として迎え入れたはずが、撒き散らし屋だった。今では食後の金魚達のキャッキャウフフtimeに、ドジョコはゴミも砂も石もひっくり返すので、スポイトでセッセと掃除する。これが意外と無になって出来る作業で、時間を忘れてしまえる。

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