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【動く地蔵】怪談師・いたこ28号先生が幼少期に体験した奇妙な話

新番組『学級怪』がようやく完成しました。

昨年の『オカルトエンタメクリスマス会』から始まり、今年6月の『樹怪談』、そして9月の『24時間オカルトエンタメ生放送』と、4人の怪談師(田中俊行・早瀬康広・深津さくら・吉田悠軌)のシリーズ最新作。

個人的には、現時点でシリーズ最高傑作だと思います。笑いと怖さと感動が味わえる理想の怪談エンタメ番組。是非ご覧になって下さい。


今生きている人であれば誰もが通った子供時代。そして学校での生活。

良かった事、楽しかった事、ムカついた事、悲しかった事、辛かった事などなど。良くも悪くも今の自分を形成する特別な時間だったことと思います。

そんな時代を、オカルトエンタメ大学に登壇された先生方はどのように過ごしていたのか?今日は、怪談師・いたこ28号先生に、当時体験した奇妙な体験談を頂きました。

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小学校~高校のクラスではとにかく喋りまくっている煩いガキ。

しかし集団生活に違和感があり集団での行動が苦手でストレスを感じた。目立ちたいので突拍子もない行動をするのだが。目立ちすぎるとそれがストレスになる変なガキでした。


私が初めて異界な者達に触れたのは七歳の夏だ。母の実家は和歌山県本宮町の山間の集落にあった。 

小学校一年生の夏休み、私は母の実家で過ごすことになる。 親から離れ祖母と二人で夏休みを過ごしたのだ。 テレビもまともに受信できない田舎だが 山と川と自然豊かな環境は、都会育ちの私に毎日新しい体験を教えてくれた。 

一週間もすると、同じ年齢の男の子と友人になった。 名前は太郎という。きっかけは思い出せないが、遊ぶようになっていた。 太郎は私にカブトムシの捕り方や、魚が多く釣れる秘密の場所などを教えてくれた。 毎日が刺激的で楽しかった。 


「おばけを見せてあげるよ」

大人の知らない秘密の場所におばけがいるという。 場所は誰にも喋るなと約束をさせられた。 ウルトラマンや怪獣映画を観て育った私は、 怪獣も妖怪もおばけもテレビや映画の中の世界だけにいるものだと分かっていた。 しかし本宮では、夜になると大人達がごく普通に昨夜見たモノノケ達の目撃談を話すので本宮にはおばけ達が存在しているのだと思えるようになっていた。

 ヒグラシが甲高い声で夏の終わりを告げている。 私は大粒の汗を手で拭いながら太郎を追うように山道を登った。 

「おばけはこれを怖がるからポケットに入れておいて」

 おばけはヨモギの葉を怖がるという。 二人はポケットに大量のヨモギの葉を詰め込んだ。 体からヨモギ葉と汗の匂いがする。 

山頂に開けた場所があった。 広場は黄に染められていた。 私の背丈ほどの雑草の先端には黄色い花が咲いている。 

背高泡立草。 

背高泡立草が咲き乱れる中に二階建ての不思議な家があった。 白い家の二階には小さな窓。 あれは土蔵だという。 白い土蔵が一軒、黄色い花を咲かせた野原の真ん中に建っている。 背高泡立草を掻き分けて土蔵の前まで行く。 反対側に回ると泥と漆喰で固めた壁に大人が出入りできるほどの大きな穴があった。 薄暗い土蔵の中には何もなかった。 

「隠れていればおばけが来るから」 

二人は土蔵の横で体育座りをして背高泡立草に隠れるようにして<おばけ>が来るのを待った。


ドッスン! 


蝉達の鳴き声が止むと同時に重い何かを地面に叩きつけるような音がした。 私が音の主を見ようとすると太郎が静止した。 

「うごかないで」 

ドッスン!

 地面が微かに振動した。 

ドッスン! 

音が我々に近づいてくるのが分かった。
 「これがおばけなの?」 太郎は私の質問にうなずくと、自分の口の前に人差し指を立てた。 怖くなった。 ポケットにあるヨモギを握りしめた。

ドッスン! 背高泡立草を押しつぶしながら、ナニかがこちらに向かって近づいてくる。 私は我慢できなくなり立ち上がった。




私は見た。

それは空中に高く跳ねながら、こちらに近づいて来ている。 それが何かすぐに分かった。 

ドッスン!!

目の前に地蔵が落下した。 背丈が130センチはある石の地蔵だ。 私はどうしていいのか分からず思考が停止していた。地蔵は私達を無視するかのように、ゆっくりと壁の方を向くと…… 下半身からチョロチョロと壁に向かって水を出した。 

……地蔵がおしっこを。 


「いまだ!!」 

太郎がヨモギの葉を地蔵に向かって投げた。 私も投げた。 私達は雄叫びをあげながら逃げた。


夏も終わり大阪に帰る日、バスの窓から山の山頂から手を振る太郎を見た。 太郎と遊んだ想い出は鮮明に覚えているのだが、彼の顔は思いだ出せない。 そして、山の山頂から手を振る太郎が、なぜあんなに大きく見えていたのか未だにわからない。 あの一夏を過ごした集落は廃村になった。

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いたこ先生に『学級怪』を見て頂きました。写真は当時の先生!

無題

先生、ありがとうございました!



★新番組『学級怪』

▼映画館の大スクリーンで上映イベントがございます!
・日程 :11月19日(金) START 19:00
・場所:池袋HUMAXシネマズ
・料金:3,000円(別途ワンドリンク代500円 ※特典のステッカー付)
・登壇者:田中俊行・早瀬康広・深津さくら・吉田悠軌
・チケットは以下よりご購入下さい

ファミリー劇場CLUBでは11月20日(土)より配信スタートです。


今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。

オカルトエンタメ大学 運営代表・小柳

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